展覧会&カタログ評院生委員会

[寸評]「ビル・ヴィオラ:はつゆめ」展

・会期:2006年10月14日~2007年1月8日
・会場:森美術館
・評者:中井 真木

http://www.mori.art.museum/contents/billviola/index.html

展覧会・カタログ評院生委員会・有志見学会の第二弾として、12月8日に訪れました。
参加者は、案を出してくださった小泉さん、手島さん、中井の3名と少なめでしたが、楽しく有意義な見学会になりました。


私個人としては、ヴィデオ・アートの個展自体がとても新鮮な経験でした。

作品の中で特に刺激を受けたのは、西洋絵画の伝統を直接踏まえた、「ドロローサ」や「グリーティング」などの作品です。これらの作品は画面も絵画のように額装され、絵画の展覧会のように展示されているのですが、画面の中の人物は超スロー再生によってゆっくりと動いています。特に「ドロローサ」や「アニマ」などの作品は、無音なので、いっそう絵画的です。瞬間を切り取る芸術である絵画に時間が持ち込まれることで生じる不思議な矛盾に強く引き込まれました。


全体として、作品のアイディアも多様で最後まで楽しめましたが、ヴィデオ・サウンド・インスタレーションと、美術館での展覧会との相性については考えさせられました。

一つは、多くの作品が最初から最後まで鑑賞するには長い時間を要するため、とてもすべては見切れないということがあります。その結果、ある作品の前に立ったときに、その作品のどの部分を見るのかは、偶然に支配され、一般の展覧会よりはるかに明示的に、鑑賞行為が鑑賞内容を規定してしまいます。

また隣の作品の音や光が漏れてくる中で鑑賞を強いられることで、作品にあまり集中できない場面があったことは、私としては残念に感じました。


もう一つ残念だったのは、展覧会のタイトルになっている「はつゆめ」という作品は、3回の特別上映のみで、それ以外に「はつゆめ」を感じさせる場面が会場にはなかったことでした。


なお、カタログは、英語版・日本語版が売られ、日本語版はISBNのついた図書の形態で淡交社から出版されています。

投稿者: 東大比較文學會 日時: 2007年1月13日 22:03

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