展覧会&カタログ評院生委員会
CatalTo2017開催〔3〕
日時:2018年6月1日(金)14:00~18:00
場所:駒場博物館2階自然科学博物館展示室
出席者:CatalTo(展覧会図録品評勝手連TOKYO)メンバー計19名
メンバー=教員4名(学内)、大学院生およびOBOG 15名(学内外)
活動報告:(〔2〕のつづき)
・CatalTo国際交流賞
(密な国際協力のもと、シルクロードの文化財を復元した点を賞します)
『シルクロード特別企画展 素心伝心 クローン文化財失われた刻の再生』(東京藝術大学大学美術館、2017年9月23日~2017年10月26日)
(選評)
「伝承される赤子の心 ―超絶レベルの復元技術が蘇らせたシルクロード」
シルクロードという、危機に晒されている国の境界を越えた人類文明の重宝を復元するにあたっては、緻密な考証研究に、高度な三次元測量と科学分析の技術を加えた長時間の作業、膨大な仕事が行われました。その成果としての展覧会は、視覚のみならず、聴覚と嗅覚における愉悦をも齎します。これはもはや文化財のクローンというにとどまらず、現代人類の新たな作品であり、シルクロードの新しいあり方でもあるでしょう。さらに、復元作品の一部は故国に「帰還」する予定なので、国際の文化交流にとっても大きな貢献となります。プロジェクトに尽力した関係者の方々の「素心」に感心してやみません。
・CatalToデザイン賞
(優れたデザイン性によって、本物の玉手箱を開く愉しみを味わえるカタログである点を賞します)
『六本木開館10周年記念展 国宝《浮線綾螺鈿蒔絵手箱》修理後初公開 神の宝の玉手箱』(サントリー美術館、2017年5月31日~2017年7月17日)
(選評)
「読んで、観て、触れて。カタログで味わう美しい手箱の悦び」
《浮線綾螺鈿蒔絵手箱》の文様が全面に施されたカタログの装幀に、大変魅了されました。装幀の紙に美しい光沢と独特の肌触りがあり、折に触れて手に取りたくなるような魅力があります。さらに表紙を左右に開いてから本文を読むという仕様はきわめて個性的でありながら、手箱の蓋を取る動作を想起させます。言うまでもありませんが、収録された作品画像と充実した解説の水準もきわめて高いといえるでしょう。手箱に触れる悦びや愉しみが、カタログを手に取る悦びに重ね合わされて再現されており、「見事」の一言に尽きます。読んで、観て、触れて、美しい蒔絵手箱の世界を堪能することができる一冊です。
・CatalToカタログを持って、出かけま賞 with 漱石
(コンパクトサイズのカタログに、詳細な地図が掲載され、思わず読者を文学散歩へといざなう点を賞します)
『漱石からの手紙 漱石への手紙』(鎌倉文学館、2017年4月22日~2017年7月9日)
(選評)
「漱石のこころを読み取れる、手紙という名の鍵。」
「手紙」というテーマを軸に、夏目漱石の人となりやその人脈が分かるカタログです。可愛い見た目に反して、内容は意外にもリューミー。手紙の図版の下には、重要な部分の内容が分かりやすいよう丁寧に入力し直してくれているのも嬉しいです。巻末に鎌倉周辺の漱石ゆかりの地を示した地図が載っていて、カタログ自体も持ち出しやすいサイズ感なので、鎌倉を訪れた際はカバンに入れて散歩をするのもいいでしょう。
(〔4〕につづく)
(2018年9月22日 文責:石川真奈実)
投稿者: WEB投稿者 日時: 2018年9月22日 22:47