展覧会&カタログ評院生委員会
CatalTo2017開催〔2〕
日時:2018年6月1日(金)14:00~18:00
場所:駒場博物館2階自然科学博物館展示室
出席者:CatalTo(展覧会図録品評勝手連TOKYO)メンバー計19名
メンバー=教員4名(学内)、大学院生およびOBOG 15名(学内外)
活動報告:(〔1〕のつづき)
・CatalToオリンピック文化プログラム賞
(日本のメダル彫刻を扱い、オリンピックを機にあまり注目されてこなかった日本文化の一側面に光を当てた点を賞します)
『特別企画 メダルの魅力』(小平市平櫛田中彫刻美術館、2017年9月13日~2017年11月12日)
(選評)
「ど真ん中の企画力! 日本彫刻界の知られざる側面に迫る」
2020年のオリンピックに向けて、美術館博物館でも文化プログラムが展開されることが期待されていますが、2018年現在では残念なことにまだ、さほどの成果が上がっていないように思われます。しかし平櫛田中彫刻美術館は、このプロジェクトに正真正銘の企画力で向き合っています。本展では個人コレクターの所蔵品を中心に、明治から昭和期にわたるスポーツ、コンテスト、戦争やその他の目的で鋳造されたメダルを150点も紹介されています。カタログはわずか十数頁のリーフレット形式ですが、図版印刷が鮮明で、よくその魅力を伝えてくれており楽しく鑑賞できます。メダル彫刻は西洋では15世紀までも遡る深い歴史と芸術性をもったジャンルですが、日本ではなかなか認知されてきませんでした。その最初期にメダル彫刻の価値に気づき、畑正吉や水谷鉄也などの制作家を育てた美術史家・岩村透原案の《賞美章》(cat.no.124)が出品されたことも驚異的です!
・CatalToクロスジャンル賞
(歴史・生活・芸術と様々な角度から自転車に迫り、子どもから大人まで楽しめるカタログになっている点を賞します)
『自転車の世紀展(THE CENTURY OF BICYCLE)』(郡山市立美術館、2017年7月22日~2017年9月24日。2017年4月9日~2017年6月4日、 茅ヶ崎市美術館、2017年10月28日~2017年12月17日、 佐倉市立美術館に巡回)
(選評)
「自転車に導かれてクロスジャンルの世界へ!!」
「自転車」という誰にとっても身近な乗り物を基軸として、美術、漫画、写真、生活文化、テクノロジー、環境問題へと、様々なジャンルに読者を誘ってくれる一冊です。先に示した一つ一つのジャンルと自転車の繋がりを丁寧に紹介していく内容構成、大人から子供まで楽しむことができるレイアウトと文章、そして巻末に収録された自転車の歴史など、このカタログが持つ魅力が読者の好奇心を刺激してくれます。これから先、自転車という文化がさらに多様なジャンルを巻き込みながら発展していくことを予感させるカタログとなっています。
・CatalTo一般にオススメで賞
(おもちゃの魅力が最大限伝わるようにレイアウトが工夫され、誰が手に取っても夢中になれる点を賞します)
『ヨーロッパの木の玩具(おもちゃ)――ドイツ・スイス、北欧を中心に』(目黒区美術館、2017年7月8日〜2017年9月3日)
(選評)
「まるでおもちゃ箱をひっくり返したような! 「遊び」心にあふれた1冊」
カタログを開いてみて下さい。色とりどりの木製玩具が見開きいっぱいに目に飛び込んできます。紙上に鮮やかに印刷された玩具は、時には頁や枠をはみ出し、静止画像であっても目の前で玩具を触っているような感覚を見る者に与えます。自由で魅力的なレイアウトでありながら、ドイツ・エルツ地方の主要工房や制作技法、玩具の歴史やそれぞれの玩具の特徴まで、様々な角度からの厚みのある解説も兼ね備えた本カタログは、手に取りやすい薄さで、幅広い世代に向けて、ヨーロッパの木の玩具の魅力と豊かな世界を余すところなく伝えてくれます。
(〔3〕につづく)
(2018年9月22日 文責:石川真奈実)
投稿者: WEB投稿者 日時: 2018年9月22日 22:45