『比較文學研究』第91号(特輯:戦後日本文学)が、2008年6月に
刊行されました。
定価は3,700円(税別)です。
以下は『比較文學研究』第91号の「編輯後記」です。
編輯後記
◎戦後文学・批評の記念碑的作品が輩出する一九四六年、四七年を経て、大岡昇平「俘虜記」、「野火」、安倍公房「終りし道の標べに」が発表されたのが一九四八年。日本比較文学会の設立がこの年であるのは、必ずしも偶然ではないだろう。文学者や批評家たちが、超克したはずの近代に再対峙し、それを再定義しようとしていったこの時期にこそ、竹内好の言う近代主義的限界も含めて、戦後日本文学の出発点があり、比較文学研究の出発点もあったはずだからだ。
◎その意味で、戦後六十年を経過し、様々なタブーのはずれた今、戦後日本文学は、あらためて比較文学研究の避けて通ることのできぬ対象となったと言うことができるだろう。もちろん、一度や二度の特集で、戦後日本文学の諸相が語り尽くせるはずもない。また折を見て、もう少しテーマを絞り込んだ形で、戦後日本文学特輯が組めればと考えている。
◎リース・モートン氏は、東大比較文学会会員ではないが、本雑誌の編輯委員の多くが加わっている、平成十八~二十年度科学研究費、基盤研究(B)「近代東アジアにおける異文化同化過程における翻訳の問題」の研究分担者である。現在、近現代日本文学史を執筆中とのこと。今回は戦争詩を通して、日本文学の戦中と戦後を語っていただいた。
◎三ツ野陽介氏の論文と趙怡氏の論文は、奥付に記載した編輯委員による審査を経たものであることを追記しておきたい。
◎昨年、十二月、仙北谷晃一教授が逝去された。文学、芸術へ思いを、流麗な文章でしたため、熱い言葉で語り、それが誰よりも様になる先生だった。仙北谷先生とは二年間、非常勤講師として同じ時間帯に出講し、駒場九号館の控室で色々とお話をお伺いする機会を持った。こちらも熱烈なフルトヴェングラー・ファンであったので、フルトヴェングラーのディスクのあれこれを論じだすと、話はいつ果てるとも無く続いた。謹んでご冥福をお祈りしたい。本号では、ささやかな追悼特輯を組ませていただいた。
◎前号でもお知らせしたが、東大比較文学会のホームページの「掲示板」には、会員図書、研究動向、近刊書紹介・書評、推薦図書などの項が設けられていて、投稿ができる仕組みになっている。ぜひご活用くださるようお願いしたい。ホームページ全般についても、何かお気づきの点などあれば、遠慮なくご教示を賜れれば幸いである。URLはhttp://www.todai-hikaku.org/ である。
(井上健)

