『比較文學研究』第89号(特輯:異文化接触と宗教文学)は、2007年5月に刊行されました。
定価は3,700円です。
以下は『比較文學研究』第89号の「編輯後記」です。
編輯後記
竹内信夫氏が停年を迎え、駒場を去られた。今号掲載論文の「あとがき」にもあるように、氏は駒場の大学院改革のさなか、「比較文学比較文化研究室の命運をかけての対応」に奔走され、現在も東大比較文学会会長の職にある。われわれにとって、まことに惜しむべき人を研究室から失うことなる。
竹内氏は、フランス文学研究、なかんずくマラルメ研究に精力を注ぐかたわら、空海研究、ことには悉曇学の研究に携わってこられた。讃岐にお生まれの縁で、早くも二十歳代から空海という思想家・宗教家に関心を寄せてこられたという。今号は、そのご退職を記念し、宗教と文学の周辺を扱う論考を集めて特輯を組んでみた。また、慣例に従って竹内氏の業績目録も収めた。
竹内氏の論文は、空海の『三十帖策子』を論じつつ、悉曇学というものの外貌をよく伝えている。君野氏と杉田氏は、編輯委員会のもとめに応じて、日頃の研鑽の成果を寄せて下さった。両氏の論文のごとき説話研究は、比較文学研究の王道たるを失わない。金成恩さんの『天路歴程』研究は、修士論文の一部をまとめたものだが、編輯委員会の厳正な査読を経た。
金子美都子氏は、フランスにおけるハイカイ受容の集中的な調査の成果をお寄せ下さった。潘郁紅さんには、博士論文の一部となるべき日本漫画の研究を、紙数の許す範囲でまとめていただいた。本誌に漫画研究が載るのははじめてのことだが、その書誌的博捜を尊びたい。これも編輯委員会の査読を経た。潘論文に限らず、今号は全論文に図版が載る。最近では珍しいことかもしれない。
小林信行氏の連載は、昭和二十六年の記述にまで及んできている。東大比較文学会の発足まであとわずかである。
本誌八十七号には、平川祐弘氏の英文著書へのスティーヴン・コリントン氏の書評が載っている。これに対して平川氏から反論を得た。その論争的性格に鑑み、牛村圭氏には第三者の立場から寄稿をお願いした。
長年の懸案であった、東大比較文学会のホーム・ページが、このたびようやく開設された。
http://www.todai-hikaku.org/
がURLであるが、比較文学比較文化研究室のホーム・ページ
http://fusehime.c.u-tokyo.ac.jp/
からも入ることができる。本誌のバックナンバーのすべての目次や、過去の「彙報」のすべても収められている。会員の投稿ページも設けてある。ぜひ一度御覧いただきたい。
(菅原克也)

