メイン

catalto アーカイブ

2017年4月30日

CatalTo 胎動会傍聴記(1)

日時:2016年3月16日
場所:駒場美術博物館セミナー室
出席者:
活動報告:
 第一回CatalTo(仮称)開催に向けた準備が本格的に始まりましたので、この機会に2016年3月16日に行われた「カタルト胎動会」について書きたいと思います。

 まず、CatalToについて説明しておきます。CatalToとは、簡単にいえば展覧会カタログの品評会のことです。その年に出版された展覧会カタログを、内容、装幀、学術的価値など、さまざまな観点から評価し、とくにすぐれたものを表彰します。このように書くとかしこまった会に思われるかもしれませんが、そうではありません。CatalToは、比較文学比較文化研究室のOBOGの方がた、あるいは学外の識者の方がたをお招きし、展覧会カタログについてざっくばらんに語りあうことを目的としています。CatalToは、参加者が思い思いに展覧会カタログを品評する「勝手連」のようなあつまりといってもいいでしょう。

 なお、CatalToという仮称は、この品評会のモデルとなったCatalPaというイベントからとったものです。CatalPaとはパリで実際に行われている展覧会カタログの品評会のことで、一般の有志の方がたが主催しているということ以外は、上で説明したCatalToの趣旨とほとんど同じようなイベントです。また、CatalPaという名称はCatalogue+Parisの造語です。そのため、私たちも本家にならって、Catalogue+TokyoということでCatalToという仮称をつけています。
 
 さて、先日開催された「カタルト胎動会」は、いわばプレCatalToという位置づけのイベントです。CatalToについて話し合いをしているさいに、一度模少人数の模擬的な品評会を開いて、その感触を確かめてみようということになりました。それがカタルト胎動会です。

 以下では、当日の様子を簡単に報告したいと思います。カタルト胎動会は駒場美術博物館セミナー室で開催されました。模擬的な品評会という位置づけでしたので、それほど多くの方にはお声がけしなかったのですが、当日は今橋映子先生、寺田寅彦先生をはじめ、比較文学比較文化研究室の関係者15名が参加してくださいました。

 品評の対象となった展覧会カタログのほとんどは、駒場美術博物館の資料室に収められているものです。2015年度に発刊された展覧会カタログだけでも相当数あり、さらに参加者が各自持参したカタログもあったので、セミナー室のテーブルはカタログでいっぱいになりました。
 
 カタルト胎動会は、テーブルに並べられた展覧会カタログを参加者が自由に閲覧し、良いと思ったカタログを数冊選ぶことから始まりました。美術を専門とされている方が多かったため、参加者のみなさんは、とてもていねいに、細部にいたるまで展覧会カタログをチェックしていました。私は哲学専攻のため美術についてはまったくの素人なので、諸先輩方にどんなポイントを重視してカタログを見ているのかをたずねまわりながら閲覧していました。
 
 次に、選んだカタログについて、各参加者がなぜそのカタログが良いと思ったかを簡単に説明していきました。参加者のみなさまは、とても興味深い視点からコメントしていました。次の投稿では、当日のコメントをまとめたものを紹介したいと思います。

(2017年4月30日 文責:吉岡悠平)

CatalTo 胎動会傍聴記(2)

日時:2016年3月16日
場所:駒場美術博物館セミナー室
出席者:
活動報告:
 引き続き、CatalTo胎動会の傍聴記を書いていきたいと思います。以下に載せるのは、当日特に人気のあった三つのカタログについてのコメントをまとめたものです。

1. 小林清親展
(静岡市美術館、2015年2月7日〜3月22日)
 何よりもまず、A5版横開きというサイズにこの図録の特徴が見られる。展覧会カタログとしてはかなり小さいサイズの本書であるが、それゆえに手に取りやすく、気軽に眺めることができる。また、通常の展覧会図録とは異なり、一般書として書店で購入できることも、本書をより身近なものにしているだろう。
 内容面でも、清親の代表作『東京名所図』など、横長の木版画を紙面いっぱいに掲載することで、この横長のフォーマットが大いに活かされている。また、第一章【光線画】(版画に適した光沢のあまりない紙)、第二章【風刺画・風俗画】(実際の新聞を思い起こさせるような少しざらざらした紙)、第三章【肉筆画・スケッチ】(光沢のある紙)と、章ごとに紙質を変え、さらに夜をテーマとした作品群の背景色は藍色にするなど、こだわりが随所に見られる。同一ページで「摺り」の比較ができるようにレイアウトされていたり、「猫と提灯」を例に35段階もの順序摺りが掲載されていたりと、サイズはコンパクトではあるが、細かな配慮が施され、中身も充実した図録と言えるだろう。
 もちろん、縦型の作品などはどうしても小さくなるし、同一作品を並べて掲載する際にも図版が小さくなってしまうという難点もあるが、これは利点と表裏一体のものであろう。大型の展覧会カタログが多い中で、他とは一線を画し、手元に置いて、気軽に楽しめる優れた図録と評価したい。(林久美子)

2. アルフレッド・シスレー展
(練馬区美術館、2015年9月20日〜11月15日)
 印象派を扱った展覧会は毎年数多く開催されており、ともすると展示内容だけでなく展覧会カタログも似通ったものになりがちであるが、本カタログは内容の充実度でそれらとは差別化を図っている。
 展覧会カタログの核となる「作品解説」には、出品作が制作された季節やその土地の特徴が詳しく記されており、画面隅々までの注意深い観察によって、一見すると同じような作品一点一点の個性が浮き彫りにされている。また、画家がよく描いた、セーヌ川とその支流について河川工学的な視点から書かれた論文(佐川美加)は、美術史研究とは異なるアプローチによりシスレー作品の新たな楽しみ方を提示している。フランスにおけるシスレー評価の経緯(小泉順也)と日本におけるシスレー受容(小野寛子)に関する論文に加え、年譜、参考文献一覧、国内外の展覧会歴、国内所蔵のシスレー作品リストなどは資料的価値が高く、本カタログは今後の印象派研究にとって欠かせない一冊となったに違いない。(井口俊)

3. Who Dance? 振り付けのアクチュアリティ展
(早稲田大学演劇博物館、2015年10月1日〜2016年1月31日)
 「舞台芸術」の「今」を展示するのにどのような方法があり得るのか、を考えさせられた展覧会。カタログの方は、あの展覧会の記録として機能しているか、はひとまず置いておいて、舞踊にまつわる(必ずしも「現代舞踊」限定ではない)良質な論考を多数集めた論文集として興味深く読める。執筆陣が自分の好きなものについて好きなことを書いている風でありながら、単なるファンレターにとどまっていないところに好感が持てる。(大西由紀)

 このように、カタログの内容に対するコメントだけではなく、カタログのつくりに注目したコメント、あるいは展覧会そのものの意義と関連づけたコメントもなされています。こうしたことからも、カタルト胎動会が非常に多様な観点から展覧会カタログを品評する会であったことがうかがえるでしょう。

 以上のように、カタルト胎動会は大いに盛り上がり、成功裡に終わりました。閉会後は近場の喫茶店でコーヒーやお酒を飲みつつ、第一回CatalTo開催に向けて関係者全員で協力して準備をすすめていこうと決意を新たにしました。今年7月には第一回CatalToを開催する予定なので、その様子をご報告できる日を今から心待ちにしております。

(2017年4月30日 文責:吉岡悠平)

2017年7月22日

CatalTo 2016 開催〔1〕

日時:2017年6月2日(金)14:00-17:00
場所:駒場博物館セミナー室
出席者:CatalTo(展覧会図録品評勝手連TOKYO)メンバー計18名
メンバー=教員2名(学内)、大学院生およびOBOG 16名(学内外)

活動報告:2017年6月2日(金)、記念すべき第一回CatalToとなるCatalTo 2016が開催されました。今回は、東京およびその近郊の美術館・博物館等で2016年度に開催中もしくは会期がスタートした企画展、巡回中もしくは巡回が始まった企画展の展覧会カタログ、計110点以上を選考対象としました。

 CatalTo 2016の選考結果および受賞カタログ・ポスターに対する選評は以下の通りです。

・CatalTo総合賞(学術性やデザイン性、独創性、娯楽性など総合的に見て良質です)
『色の博物誌 江戸の色彩を視る・読む』(目黒区美術館、2016年10月22日--12月18日)
(選評)
「多方面から解き明かされる江戸の色彩美」
 色の原材料そのものに着眼するというきわめて独創的かつ意欲的な試み。カタログの紙面を彩る美しい色材の数々は華やかで、読者の眼を豊かに愉しませます。それのみならず、考古学・民俗学・歴史学・美術研究を横断する多ジャンルの文化史的研究が展開されています。江戸時代の国絵図と浮世絵を支えた、色をめぐる卓越した江戸の技術の粋をも一挙に知ることのできる贅沢な一冊。


・CatalTo学術賞(論文や解説、書誌等が充実し、特に高い学術的価値を賞します)
『シャセリオー展 19世紀フランス・ロマン主義の異才』(国立西洋美術館、2017年2月28日--5月28日)
(選評)
「知られざる巨匠の魅力に正攻法で迫りゆく」
 日本ではこれまで、ほとんど知られていなかった画家の魅力を、高い学術性に基づき紹介した展覧会のカタログ。内容の核となる論文、作品解説は言うまでも無く、関連年表・地図、参考文献といった資料の部分にも執筆者陣の熱意が込められており、繰り返し手に取る度に新しい知見や研究上のヒントを得ることの出来る一冊です。

『花森安治の仕事 デザインする手、編集者の眼』(世田谷美術館、2017年2月11日--4月9日。2017年4月から10月まで他三館に全国巡回)
(選評)
「圧倒的なまでの資料価値!」
 雑誌編集のプロセスという珍しい題材で企画された展覧会が盛況に終わったのは、テレビドラマの効果だけではないだろう。徹底して資料を集め、花森の仕事の全貌を提示しようという企画者の熱意の賜だ。また同時に、「作家」「作品」ではなくその伝達媒体・プロセスに焦点を当てるという側面も持っており、その意味でも日本の展覧会企画に新たな可能性を提示したと言える。充実したカタログは、今後の雑誌研究において貴重な資料となるに違いない。


・CatalTo印刷賞(出品作品の図版や画像の再現性や色彩の美しさを賞します)
『並河靖之七宝 明治七宝の誘惑 透明な黒の感性』(東京都庭園美術館、2017年1月14日--4月9日。2017年9月から12月まで他二館に全国巡回)
(選評)
「「透明な黒」と静謐な七宝の美を堪能する一冊」
 単なる超絶技巧でない、「透明な黒」から浮かび上がる文様の、息を飲む美しさと静謐さを再現。形態にも帯にも凝って、並河七宝への敬愛が表現されている図版印刷の質の高さを味わいたい一冊。もちろん学術的にも大変深い内容が展開されています。


・CatalTo薄くても良いで賞(小規模ながら、解説・情報等の量や質の水準が高いです)
『近代日本のイタリア発見 岩倉使節団の記録から』(久米美術館、2016年7月1日--7月24日。2016年10月1日--10月30日に京都外国語大学国際文化史料館に巡回)
(選評)
「発見し発見される越境者たちの濃密な旅」
 明治維新期に欧米諸国を歴訪した岩倉使節団。そのイタリア滞在を、『米欧回覧実記』の執筆者・久米邦武の関連資料に加え、当時の新聞や公文書などイタリア側の新資料も参照しながら詳細に辿ります。パネル展示をまとめたわずか38ページのカタログですが、とにかく内容が豊富。近代日本が見たイタリア、そして近代イタリアが見た日本。その驚きと発見に迫るとともに、いまひとたび日伊関係に目を向けるきっかけとなる一冊です。

(〔2〕に続く)

(2017年7月22日 文責:松枝佳奈)

CatalTo 2016 開催〔2〕

日時:2017年6月2日(金)14:00-17:00
場所:駒場博物館セミナー室
出席者:CatalTo(展覧会図録品評勝手連TOKYO)メンバー計18名
メンバー=教員2名(学内)、大学院生およびOBOG 16名(学内外)

活動報告:(〔1〕の続き)

・CatalTo一般にオススメで賞(高い独創性や娯楽性から、ぜひ多くの読者に手に取っていただきたいです)
『南極建築 1957-2016』(LIXILギャラリー1(東京)、2017年3月30日--5月27日。2016年12月9日--2017年2月21日にLIXILギャラリー大阪で開催)
(選評)
「氷のフロンティアを拓く人々の生活を追体験させてくれる一冊」
 1911年にノルウェーのアムンセン隊が前人未到の極地に到達してから、およそ100年が経過した今もなお、南極という地はロマン溢れるフロンティアとして一般的には認識されています。『南極建築 1957-2016』は、そのような極地での過酷な環境の中で仕事をする人々の生活を、豊富な建築技術とともに紹介してくれる一冊となっています。ページのデザインやレイアウト、紙質に工夫が凝らされ、なおかつ設計図面や写真、そして温かみのあるイラストレーションによって巧みに構成されたこの一冊は、誰も想像さえ出来なかった南極での生活を、私たちに追体験させてくれる機会を提供してくれます。

・CatalTo国際交流賞(外国の美術館や博物館との緊密な協力を賞します)
『漢字三千年 漢字の歴史と美』(東京富士美術館、2016年10月20日--12月4日。2017年3月から9月まで他四館に全国巡回)
(選評)
「漢字の変遷と共に、時を超える旅をしよう。」
 漢字は、三千年の時空を超えてやってきた。新石器時代から今日まで、漢字は使い続けられるほど、その美しさが増す。漢字字体の変遷のみならず、書かれる素材の豊かさも驚かせる。
17ヶ所の中国の博物館・研究機関から国家一級文物23点を含む約110点を出品するとはなかなか得難い規模である。日中国交正常化四十五周年にあたって、同じく漢字圏にある日中両国の共有できる歴史そのものとしての漢字を展示するのは両国の友好と平和にとっても意義深い。

CatalTo17_20.JPG

・CatalToポスター賞(優れた特色があり、デザイン性が高いと認められるポスターです)
『女たちの絹絵 ベトナム絹絵画家グエン・ファン・チャン 3rd絵画保存修復プロジェクト展』(上野の森美術館ギャラリー、2017年5月10日--5月16日)*本展の会期は2016年度ではありませんが、その掲示用ポスターが特色のある優れたデザインであったため授賞することとなりました。
(選評)
「風に揺れ光を通す絹絵から、静かな涼が漂う。」
 ベトナムには、ソンロウ河の底に美しい怪魔が住み、乙女に呪いをかけて引きずり込むという民間伝承があるそうです(松村武雄『インドネシア・ベトナムの神話伝説』)。この絹絵を前にすると、洞窟の底――しずくの音が谺するひんやりと静かな空間――にいるような気持ちになりますが、ちょうどここに描かれる、ファン・チャンの娘とその友人をモデルにしたという白い衣の娘たちは、水の底で戯れながら永遠の時を過ごす怪魔と乙女なのかもしれません。
 美術には厳しいベトナムの気候と社会条件をおして修復・保存に努められ、その魅力を伝えるべく複製美術(ポスター)にまで込められたその御心は、未来のベトナムを照らすことでしょう。限定百部の貴重なポスターを駒場美術博物館へ寄贈くださいましたことも、記して御礼を申し上げます。

CatalTo17_300.jpg

以上、計8点。

(〔3〕に続く)

(2017年7月22日 文責:松枝佳奈)

CatalTo 2016 開催〔3〕

日時:2017年6月2日(金)14:00-17:00
場所:駒場博物館セミナー室
出席者:CatalTo(展覧会図録品評勝手連TOKYO)メンバー計18名
メンバー=教員2名(学内)、大学院生およびOBOG 16名(学内外)

活動報告:(〔2〕の続き)

以下の13点の展覧会カタログは受賞には至りませんでしたが、メンバーから受賞候補として挙げられました(順不同)。

・『オルセー美術館・オランジュリー美術館所蔵 ルノワール展』(国立新美術館、2016年4月27日--8月22日)
・『パロディ、二重の声 日本の一九七〇年代前後左右』(東京ステーションギャラリー、2017年2月18日--4月16日)
・『没後100年 宮川香山』(サントリー美術館、2016年2月24日--4月17日。2016年4月から11月まで他二館に全国巡回)
・『大妖怪展 土偶から妖怪ウォッチまで』(江戸東京博物館、2016年7月5日--8月28日。2016年9月10日--11月6日にあべのハルカス美術館に巡回)
・『世界遺産 ラスコー展』(国立科学博物館、2016年11月1日--2017年2月19日)
・『クリスチャン・ボルタンスキー アニミタス さざめく亡霊たち』(東京都庭園美術館、2016年9月22日--12月25日)
・『トーマス・ルフ展』(東京国立近代美術館、2016年8月30日--11月13日)
・『木々との対話 再生をめぐる5つの風景』(東京都美術館、2016年7月26日--10月2日)
・『知られざる日本写真開拓史』(東京都写真美術館、2017年3月7日--5月7日)
・『フランスの風景 樹をめぐる物語』(東郷青児記念損保ジャパン日本興亜美術館、2016年4月16日--6月26日)
・『ナムジュン・パイク展 没後10年 2020年笑っているのは誰?+?=??』(ワタリウム美術館、2016年7月17日--10月10日)
・『見世物大博覧会』(国立民族学博物館、2016年9月8日--11月9日。2017年1月17日--3月20日に国立歴史民俗博物館に巡回)
・『ピエール・アレシンスキー展』(Bunkamura ザ・ミュージアム、2016年10月19日--12月8日。2017年1月28日--4月16日に国立国際美術館に巡回)

 なお、今後のCatalToでは、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会を契機として全国各地で実施されている「オリンピック文化プログラム」の動向にも注目する予定です。特に東京およびその近郊で開催され、「beyond2020プログラム」、「公認文化オリンピアード」、「応援文化オリンピアード」、「東京2020参画プログラム」等に参加する企画展や文化イベント等のカタログが、CatalToの新たな選考対象となることが予想されます。

 これまで全国の美術館・博物館等の展覧会カタログの収集、所蔵を続けてきた駒場博物館資料室の開室10周年およびCatalTo 2016の開催を記念し、以下の式典ならびに記念パーティーが開催されました。

2017年7月21日(金)
16時〜17時 駒場博物館資料室開室10周年記念式典
(於:東京大学教養学部駒場キャンパス駒場博物館)
17時15分〜19時30分 駒場博物館資料室開室10周年およびCatalTo 2016 記念パーティー(於:東京大学教養学部駒場キャンパス18号館4階オープンスペース)

 各会場で上記8点の受賞カタログおよびポスターが披露されたほか、記念パーティーでは受賞カタログ制作に関わられた担当学芸員およびデザイナーの方々をお招きし、展覧会開催ならびにカタログ制作の現場に関する大変貴重なお話を伺いました。

 また来年春には駒場博物館常設展の一隅において、資料室活動のご紹介の一環として、受賞カタログ、ポスター等が展覧される予定となっています。

(2017年7月22日 文責:松枝佳奈)

2017年7月29日

駒場博物館資料室開室10周年記念式典・パーティー開催

日時:2017年7月21日(金)16:00-19:30
場所:東京大学教養学部駒場キャンパス 駒場博物館ホールおよび18号館4階オープンスペース
出席者:学内外関係者数十名
活動報告:これまで全国の美術館・博物館等の展覧会カタログの収集、所蔵を続けてきた駒場博物館資料室の開室10周年およびCatalTo 2016の開催を記念し、以下の式典ならびに記念パーティーが開催されました。

2017年7月21日(金)
16時〜17時 駒場博物館資料室開室10周年記念式典
(於:東京大学教養学部駒場キャンパス駒場博物館ホール)
17時15分〜19時30分 駒場博物館資料室開室10周年およびCatalTo 2016 記念パーティー(於:東京大学教養学部駒場キャンパス18号館4階オープンスペース)

 記念式典では、石田淳教養学部長をはじめ駒場図書館、駒場博物館関係者の御挨拶を頂き、「密度の高いカタログ専門図書室」として今後も活動していくことが改めて確認されました。
 各会場では上記8点の受賞カタログおよびポスターが披露されたほか、記念パーティーではCatalTo2016授賞式および、受賞カタログ制作に関わられた担当学芸員およびデザイナーの方々から、展覧会開催ならびにカタログ制作の現場に関する大変貴重なお話を伺うなど、盛会のうちに終了いたしました。
(2017年7月29日 文責:松枝佳奈)

IMG_4559.JPG

IMG_4692.JPG

2018年9月22日

CatalTo2017開催〔1〕

日時:2018年6月1日(金)14:00~18:00
場所:駒場博物館2階自然科学博物館展示室
出席者:CatalTo(展覧会図録品評勝手連TOKYO)メンバー計19名
メンバー=教員4名(学内)、大学院生およびOBOG 15名(学内外)
172a3c1e.jpg
活動報告:2018年6月1日(金)、昨年に引き続き、第二回CatalTo 2017が開催されました。今回は、東京およびその近郊の美術館・博物館等で2017年度に開催中もしくは会期がスタートした企画展、巡回中もしくは巡回が始まった企画展の展覧会カタログ、計150点以上を選考対象としました。
今回は、美術の分野にとどまらず、文学の分野のカタログも受賞しています。また、昨年度より注目していた、東京五輪に伴う「オリンピック文化プログラム」に指定されているカタログにも賞に該当するものがありました。
CatalTo 2017の選考結果および受賞カタログ・ポスターに対する選評は以下の通りです。

・CatalTo学術賞
(論文・翻刻・参考文献などが充実し、研究の出発点となる学術的価値の高さを賞します)
『狩谷棭斎墓碑受贈記念 狩谷棭斎――学業とその人』(早稲田大学会津八一記念博物館、2017年11月28日~2018年1月20日)
(選評)
「学術研究をリードする一冊  近世考証学者の墓碑から拓かれる領野」
近世後期、古碑や古典の考証において名を成した狩谷棭斎は、与謝野鉄幹らによって全集が編まれるなど、近代の古典受容にもつながる重要な人物ですが、盛んに研究されてきたわけではありません。墓碑の寄贈を機に制作された本カタログは、棭斎及び関連人物に関する複数の学術論文と、充実した参考文献一覧を収めるだけでなく、拓本や書物など文字資料中心の図版を、文字を読むのに適切な大きさ、かつカラーで掲載した上で、それぞれに釈文をつけており、研究上の使用に耐えるものとなっています。多方面に展開しうる棭斎研究の出発点となることが期待される、学術研究をリードする一冊です。

・CatalTo文学展賞
(企画の目の付け所を初め、初翻刻資料や文献一覧など、最先端の文学研究の成果が掲載されている点を賞します)
『明治文壇観測――鷗外と慶応3年生まれの文人たち』(文京区立森鷗外記念館、2017年 10月 7日 ~ 2018年 1月 8日)
(選評)
「カタログにして、今後の鷗外研究必携の書」
文芸雑誌『めさまし草』における鷗外と文人たちとの交流という、これまでの鷗外研究では閑却されていた着眼点に基づく、オリジナリティあふれる展覧会カタログです。初めて翻刻された資料や、文学界の動きおよび鷗外と文人たちの動きがわかりやすく整理された「明治文壇観測的年表」、『めさまし草』誌上で批評された作品の書誌情報がまとめられた「「めさまし草」収録 批評作品一覧」も収録され、カタログでありながら鷗外研究の最先端ともいうべき一冊となっています。

・CatalTo手のぬくもり・こだわり賞
(カタログが充実している点は勿論、手漉きの紙で作られたポスターからも温かみが伝わってくる点を賞します)
『世界を変える美しい本 インド・タラブックスの挑戦』(板橋区立美術館、2017年11月25日〜2018年1月8日。2018年4月21日~2018年6月3日、 刈谷市美術館に巡回)
(選評)
「出版のフロンティアはこんなにも美しい。」
南インドの小さな出版社、タラブックス。手漉きの紙に手刷りし、針と糸で綴じる工芸品のような絵本で知られますが、他にもインド社会の多様性を表現する多彩な出版物を手掛けています。少数民族や女性の技能を掬い上げ、話し合いを重ねながら本をつくり、正当な対価を支払うことで、よりよい世界を目指すタラブックスの挑戦。カタログに掲載された写真からは、工房での作業風景や街の様子も垣間見られます。絵本を持つ「手」は、職人の手仕事、そしてページをめくる私たちの手つきを連想させます。世界に働きかける本の力を感じてみてください。

(〔2〕につづく)
(2018年9月22日  文責:石川真奈実)

CatalTo2017開催〔2〕

日時:2018年6月1日(金)14:00~18:00
場所:駒場博物館2階自然科学博物館展示室
出席者:CatalTo(展覧会図録品評勝手連TOKYO)メンバー計19名
メンバー=教員4名(学内)、大学院生およびOBOG 15名(学内外)

活動報告:(〔1〕のつづき)

・CatalToオリンピック文化プログラム賞
(日本のメダル彫刻を扱い、オリンピックを機にあまり注目されてこなかった日本文化の一側面に光を当てた点を賞します)
『特別企画 メダルの魅力』(小平市平櫛田中彫刻美術館、2017年9月13日~2017年11月12日)
(選評)
「ど真ん中の企画力! 日本彫刻界の知られざる側面に迫る」
2020年のオリンピックに向けて、美術館博物館でも文化プログラムが展開されることが期待されていますが、2018年現在では残念なことにまだ、さほどの成果が上がっていないように思われます。しかし平櫛田中彫刻美術館は、このプロジェクトに正真正銘の企画力で向き合っています。本展では個人コレクターの所蔵品を中心に、明治から昭和期にわたるスポーツ、コンテスト、戦争やその他の目的で鋳造されたメダルを150点も紹介されています。カタログはわずか十数頁のリーフレット形式ですが、図版印刷が鮮明で、よくその魅力を伝えてくれており楽しく鑑賞できます。メダル彫刻は西洋では15世紀までも遡る深い歴史と芸術性をもったジャンルですが、日本ではなかなか認知されてきませんでした。その最初期にメダル彫刻の価値に気づき、畑正吉や水谷鉄也などの制作家を育てた美術史家・岩村透原案の《賞美章》(cat.no.124)が出品されたことも驚異的です!

・CatalToクロスジャンル賞
(歴史・生活・芸術と様々な角度から自転車に迫り、子どもから大人まで楽しめるカタログになっている点を賞します)
『自転車の世紀展(THE CENTURY OF BICYCLE)』(郡山市立美術館、2017年7月22日~2017年9月24日。2017年4月9日~2017年6月4日、 茅ヶ崎市美術館、2017年10月28日~2017年12月17日、 佐倉市立美術館に巡回)
(選評)
「自転車に導かれてクロスジャンルの世界へ!!」
「自転車」という誰にとっても身近な乗り物を基軸として、美術、漫画、写真、生活文化、テクノロジー、環境問題へと、様々なジャンルに読者を誘ってくれる一冊です。先に示した一つ一つのジャンルと自転車の繋がりを丁寧に紹介していく内容構成、大人から子供まで楽しむことができるレイアウトと文章、そして巻末に収録された自転車の歴史など、このカタログが持つ魅力が読者の好奇心を刺激してくれます。これから先、自転車という文化がさらに多様なジャンルを巻き込みながら発展していくことを予感させるカタログとなっています。

・CatalTo一般にオススメで賞
(おもちゃの魅力が最大限伝わるようにレイアウトが工夫され、誰が手に取っても夢中になれる点を賞します)
『ヨーロッパの木の玩具(おもちゃ)――ドイツ・スイス、北欧を中心に』(目黒区美術館、2017年7月8日〜2017年9月3日)
(選評)
「まるでおもちゃ箱をひっくり返したような! 「遊び」心にあふれた1冊」
カタログを開いてみて下さい。色とりどりの木製玩具が見開きいっぱいに目に飛び込んできます。紙上に鮮やかに印刷された玩具は、時には頁や枠をはみ出し、静止画像であっても目の前で玩具を触っているような感覚を見る者に与えます。自由で魅力的なレイアウトでありながら、ドイツ・エルツ地方の主要工房や制作技法、玩具の歴史やそれぞれの玩具の特徴まで、様々な角度からの厚みのある解説も兼ね備えた本カタログは、手に取りやすい薄さで、幅広い世代に向けて、ヨーロッパの木の玩具の魅力と豊かな世界を余すところなく伝えてくれます。

(〔3〕につづく)
(2018年9月22日  文責:石川真奈実)

CatalTo2017開催〔3〕

日時:2018年6月1日(金)14:00~18:00
場所:駒場博物館2階自然科学博物館展示室
出席者:CatalTo(展覧会図録品評勝手連TOKYO)メンバー計19名
メンバー=教員4名(学内)、大学院生およびOBOG 15名(学内外)

活動報告:(〔2〕のつづき)

・CatalTo国際交流賞
(密な国際協力のもと、シルクロードの文化財を復元した点を賞します)
『シルクロード特別企画展 素心伝心 クローン文化財失われた刻の再生』(東京藝術大学大学美術館、2017年9月23日~2017年10月26日)
(選評)
「伝承される赤子の心 ―超絶レベルの復元技術が蘇らせたシルクロード」
シルクロードという、危機に晒されている国の境界を越えた人類文明の重宝を復元するにあたっては、緻密な考証研究に、高度な三次元測量と科学分析の技術を加えた長時間の作業、膨大な仕事が行われました。その成果としての展覧会は、視覚のみならず、聴覚と嗅覚における愉悦をも齎します。これはもはや文化財のクローンというにとどまらず、現代人類の新たな作品であり、シルクロードの新しいあり方でもあるでしょう。さらに、復元作品の一部は故国に「帰還」する予定なので、国際の文化交流にとっても大きな貢献となります。プロジェクトに尽力した関係者の方々の「素心」に感心してやみません。

・CatalToデザイン賞
(優れたデザイン性によって、本物の玉手箱を開く愉しみを味わえるカタログである点を賞します)
『六本木開館10周年記念展 国宝《浮線綾螺鈿蒔絵手箱》修理後初公開 神の宝の玉手箱』(サントリー美術館、2017年5月31日~2017年7月17日)
(選評)
「読んで、観て、触れて。カタログで味わう美しい手箱の悦び」
《浮線綾螺鈿蒔絵手箱》の文様が全面に施されたカタログの装幀に、大変魅了されました。装幀の紙に美しい光沢と独特の肌触りがあり、折に触れて手に取りたくなるような魅力があります。さらに表紙を左右に開いてから本文を読むという仕様はきわめて個性的でありながら、手箱の蓋を取る動作を想起させます。言うまでもありませんが、収録された作品画像と充実した解説の水準もきわめて高いといえるでしょう。手箱に触れる悦びや愉しみが、カタログを手に取る悦びに重ね合わされて再現されており、「見事」の一言に尽きます。読んで、観て、触れて、美しい蒔絵手箱の世界を堪能することができる一冊です。

・CatalToカタログを持って、出かけま賞 with 漱石
(コンパクトサイズのカタログに、詳細な地図が掲載され、思わず読者を文学散歩へといざなう点を賞します)
『漱石からの手紙 漱石への手紙』(鎌倉文学館、2017年4月22日~2017年7月9日)
(選評)
「漱石のこころを読み取れる、手紙という名の鍵。」
「手紙」というテーマを軸に、夏目漱石の人となりやその人脈が分かるカタログです。可愛い見た目に反して、内容は意外にもリューミー。手紙の図版の下には、重要な部分の内容が分かりやすいよう丁寧に入力し直してくれているのも嬉しいです。巻末に鎌倉周辺の漱石ゆかりの地を示した地図が載っていて、カタログ自体も持ち出しやすいサイズ感なので、鎌倉を訪れた際はカバンに入れて散歩をするのもいいでしょう。

(〔4〕につづく)
(2018年9月22日  文責:石川真奈実)

CatalTo2017開催〔4〕

日時:2018年6月1日(金)14:00~18:00
場所:駒場博物館2階自然科学博物館展示室
出席者:CatalTo(展覧会図録品評勝手連TOKYO)メンバー計19名
メンバー=教員4名(学内)、大学院生およびOBOG 15名(学内外)

活動報告:(〔3〕のつづき)

以下の18点の展覧会カタログは受賞には至りませんでしたが、メンバーから受賞候補として挙げられました(順不同)。

・『鷗外の「庭」に咲く草花』(文京区立森鷗外記念館、2017年4月8日~2017年7月2日)
(寸評)
作品に登場する草花と、鷗外自邸の植物。同年生まれの鷗外と富太郎。これらを結びつけたテーマの妙と、花の写真に惹かれる一冊。

・『横尾忠則全版画』(町田市立国際版画美術館、2017年4月22日~2017年6月18日。2017年9月9日~2017年12月14日、横尾忠則現代美術館に巡回)
(寸評)
横尾忠則本人にみられるある「強烈さ」が、カタログそのものに置き換えられているような印象を受ける。

・『芦原義信 建築アーカイブ展』(武蔵野美術大学美術館、2017年5月22日~2017年8月13日)
(寸評)
芦原義信の建築をめぐり、写真、設計図、データ、文章などの多様な媒体によって構築されたアーカイブを、一冊の本としてアーカイブする新しい展覧会カタログ。

・『タイ:仏の国の輝き』(東京国立博物館、2017年7月4日~2017年8月27日。2017年4月11日~2017年6月4日、九州国立博物館にて開催)
(寸評)
タイ王国の仏教文化に内在する特徴を体系的かつ網羅的に視覚化した秀作。 特にカタログに掲載された仏像写真の多くは、東大寺の撮影で知られている三好和義によるものであるが、 普段日本の仏像写真を撮っていた作家の個性が、タイの仏像と遭遇した際にどのように現われるのかが確認できるのも、 このカタログの見どころの一つ。

・『藝「大」コレクション:パンドラの箱が開いた!』(東京藝術大学大学美術館、2017年7月11日~2017年9月10日)
(寸評)
東京藝術大学の重厚かつ多彩なコレクションを8つの視点から提示。これからのコレクション展の可能性を考える上での一つの解を示す。

・『美人画名品選:春信・歌麿から芳年・周延まで』(足立区立郷土博物館、2017年7月22日~2017年9月18日)
(寸評)
鈴木春信から楊洲周延まで、江戸明治の錦絵美人画を贅沢に結集。薄いながらも要を得た情報を盛込み、美人画の精髄を手軽に味わえる。

・『超絶記録!西山夘三のすまい採集帖』(LIXIL GALLERY、GALLERY1(東京)2017年9月7日~2017年11月25日。2017年6月9日~2017年8月22日、GALLERY OSAKAにて展示)
(寸評)
戦後日本の様々な庶民住宅と暮す者の息吹が残る生活空間のスケッチが満載。建築学者西山夘三の魅力が存分に凝縮された一冊。

・『シャガール:三次元の世界』(東京ステーションギャラリー、2017年9月16日~2017年12月3日)
(寸評)
シャガールの色彩豊かなイメージを覆す真っ白な表紙。知られざる立体作品の愛に満ちた世界へと誘われる。

・『漱石と子規:松山と東京友情の足跡』(新宿歴史博物館、2017年9月24日~2017年11月19日)
(寸評)
漱石と子規との交流に着目し、両者に縁ある松山市とも連携して開催された展覧会でした。「交友年譜」は、巻末の地図とも対応しており、ふたりの交流が読者の目に浮かぶようです。

(〔5〕につづく)
(2018年9月22日 文責:石川真奈実)

CatalTo2017開催〔5〕

日時:2018年6月1日(金)14:00~18:00
場所:駒場博物館2階自然科学博物館展示室
出席者:CatalTo(展覧会図録品評勝手連TOKYO)メンバー計19名
メンバー=教員4名(学内)、大学院生およびOBOG 15名(学内外)

活動報告:(〔4〕のつづき)


・『澁澤龍彦:ドラコニアの地平』(世田谷文学館、2017年10月7日~2017年12月17日)
(寸評)
没後30年を迎えた澁澤の魅力を「語る」一冊。豪華ゲストのエッセイや対談に加え、愛蔵の品々の静かな「語り」が心に迫る。

・『日本パステル畫事始め』(目黒区美術館、2017年10月14日~2017年11月26日)
(寸評)
日本における「パステル畫」の成り立ちを、パステルという画材の特質や製造工程まで具体的に例示した、資料的価値の高い展覧会カタログ。

・『タイポグラフィーの楽しさを探る』(武蔵野美術大学美術館、2017年10月16日~2017年11月11日)
(寸評)
タイポグラフィーの教育現場と、その多様な実践を一冊の書物で伝えるカタログ。理念と実践を兼ねた一冊が、タイポグラフィーのこれからの可能性を想像させてくれる。

・『明治の万国博覧会 新たな時代へ』(久米美術館、2017年10月21日~2017年12月3日)
(寸評)
第五回パリ万博(一九〇〇)、セントルイス万博(一九〇四)、第五回内国勧業博覧会(一九〇三)が見て分かる、読んで分かる一冊。ビジュアルとテクストのバランスが良く、リーダブル。

・『無垢と経験の写真』(東京都写真美術館、2017年12月3日~2018年1月28日)
(寸評)
すでに十四回目となる「日本の新進作家」展のカタログ。特段に目を引く構成ではないが、新進作家を着実に紹介して世に送り出してゆこうとする、同館の確かで篤実な姿勢をうかがわせて好感が持てる。扱われている内では最も若いが、片山真理の作品が秀逸と感じた。

・『徳川家光と若一王子縁起絵巻』(北区飛鳥山博物館、2018年3月17日~2018年5月6日)
(寸評)
家光の命で作られた絵巻(模本のみ現存)の全貌を紹介。横長の判型で綴じ代に写真が隠れず、連続する場面も見やすい設計。

・『フランス絵本の世界:鹿島茂コレクション』(東京都庭園美術館、2018年3月21日~2018年6月12日。2017年9月23日~2017年12月24日、群馬県県立舘林美術館にて開催)
(寸評)
まるで「絵本」のような可愛らしいカタログ。展示された絵本のクローズアップ写真がたくさん載っていて、「ここのこの装飾を見てほしい」「この絵に注目してほしい」というメッセージが伝わってきます。展覧会で見逃してしまったところを新たに発見できる面白いカタログになっていると思います。

(以下は、東京近郊での展覧会ではありませんが、ノミネートされたものです)
・『KYOTO GRAPHIE』(京都国際写真展、2017年4月15日~2017年5月14日。虎屋 京都ギャラリーをはじめ18ヶ所で同時に展示)
(寸評)
街なかに点在する各会場を舞台とした国際芸術祭の内容を凝縮したカタログ。良質な印刷により、その全体像を概観できる。

・『図録近代日本の道徳教育』(京都市学校歴史博物館、2017年12月16日~2018年4月15日)
(寸評)
歴代の教科書の見開き図版多数。「道徳」の前身である修身教育の歴史から、近代日本が目指した国家のあり方が見えてくる。

(2018年9月22日 文責:石川真奈実)

CatalTo2017 授賞式・パーティー開催〔1〕

日時:2018年7月27日(金)16:00-19:00
場所:東京大学教養学部駒場キャンパス 18号館4階コラボレーションルーム1およびオープンスペース
出席者:学内外関係者45名
活動報告:16:00〜18:00 CatalTo 2017授賞式
(於:東京大学教養学部駒場キャンパス18号館4階コラボレーションルーム1)
18:00~19:00  CatalTo 2017 記念パーティー(於:東京大学教養学部駒場キャンパス18号館4階オープンスペース)
4a465b59.jpg
 CatalTo 2017授賞式では、受賞カタログの作成に携わられた担当学芸員の方々、デザイナーの方々をお招きし、展覧会開催およびカタログ作成にまつわる現場のお話を伺った。また、先日のCatalTo 2017にて、受賞カタログを推薦した教授・院生が中心となって、それぞれの受賞カタログの魅力的な点を、現場の方々に直接お伝えする時間も設けられた。日ごろは、知ることの叶わない生の声を聞かせていただける貴重なひと時であった。
以下は、開会の辞、それぞれの受賞カタログへのプレゼンテーションと、担当学芸員・デザイナーの方々のお話、閉会の辞をまとめたものである。(以下、敬称略とさせていただきます)

◎開会の辞(東京比較文學会編輯委員 CatalTo担当・今橋映子)
 東大比較文学会の機関誌である『比較文學研究』に、展覧会カタログ評が掲載されるようになって20年近くが経つ。現在は東京近郊の展覧会を、研究分野に近い博士課程の院生が執筆することが多いが、その展覧会と執筆者選定のための組織として、院生委員会が存在する。その院生員会の10周年記念の際、CatalPa(パリ周辺の展覧会カタログを勝手に表彰する活動)が話題に上り、それの東京版・CatalToの開催へと話は進んでいった。
 一昨年に試行され、昨年、晴れて第1回CatalToが開催された。今年は第2回となる。観客のひとりひとりとして、研究の興味関心に基づいて、カタログを選定した。選定対象となったカタログは、駒場美術博物館展覧会資料室に蒐集されているものを主としている。駒場美術博物館展覧会資料室には、分野を跨ぐような、他の分野と手を結ぶことで新しい視界を拓くような、専門性の高いカタログが、(蒐集できる数にかぎりはあるものの)集められている。この授賞プロジェクトが勝手連の精神で自由に運営されながらも、社会と大学を結ぶ一つの機縁となることを祈っている。

◎CatalTo学術賞(早稲田大学會津八一記念博物館)
『狩谷掖斎墓碑受贈記念 狩谷掖斎――学業とその人』
・プレゼンターから
 東日本大震災によって、狩谷掖斎の墓碑が破損し修理する必要が生まれたことをきっかけとする展覧会である。本カタログを推薦する理由は、主に以下の二点である。一つ目は、学術研究をリードするようなカタログである点を挙げたい。あまり研究されてこなかった狩谷掖斎という人物を取り上げ、「考証家」狩谷掖斎の業績を辿りながら、周辺の人物への目配りを行った、多角的な広がりを持つ展覧会であったといえよう。二点目は、資料的な価値の高さである。資料がカラー刷りであるところ、漢文には訓読文が付記されているところなど、資料として見る際に便利である。

・受賞者から(早稲田大学會津八一記念博物館・徳泉さち)
 東日本大震災によって、破損した墓碑の破片を拾うところから、作業は始まった。大きな墓碑であったため、修復場に持っていくところから苦労があった。ミルフィーユ状になった石が捲れ上がってくるのを押さえるのも困難であった。3年の歳月を要し、修復を終え、博物館に運び込んだ。
早稲田大学會津八一記念館博物館の強みは、大学のなかにある博物館であるところにある。狩谷掖斎は様々な方面で活躍した人物であったが、展示ではその多方面での活躍をすべて見せ尽くすことができなかった。その活躍をあますところなく伝えるため、図録には大学の様々な先生へ原稿依頼をするなど協力を仰ぎ、厚みのあるカタログを作成することができた。

(〔2〕につづく)
(2018年9月22日 文責:石川真奈実)
22a691e1.jpg

CatalTo2017 授賞式・パーティー開催〔2〕

日時:2018年7月27日(金)16:00-19:00
場所:東京大学教養学部駒場キャンパス 18号館4階コラボレーションルーム1およびオープンスペース
出席者:学内外関係者45名
活動報告:(〔1〕のつづき)

◎CatalTo文学展賞(文京区立森鷗外記念館)
『特別展 明治文壇観測――鷗外と慶応3年生まれの文人たち』
・プレゼンターから
 これまでの鷗外研究とは異なった、人的交流という観点からの森鷗外に関する展覧会であった点に特色があったといえよう。『めさまし草』において批評された作品の初出がどの雑誌であったかをまとめた表や、初めて翻刻された資料などがとても充実している。本カタログは、既存の鷗外研究書には載っていなかった情報も多く収録され、カタログという枠を超え、研究書と呼ぶべき価値があると思う。

・受賞者から(文京区立森鷗外記念館・塚田瑞穂)
 この展覧会は、鷗外記念館の5周年を記念するものであった。鷗外記念館は、「森鷗外」という個人名を冠した文学館であるため、展示内容について「どうせ鷗外のものだ」という印象や、「一度行けばそれでいい」という思いを来館者に抱かれてしまう懼れがある。そのような思いを拭い去るため、特別展とコレクション展を年2回行い、いつ来ても「楽しい」、「変っている」文学館を目指している。
 また、昨年は正岡子規・夏目漱石の生誕150周年であったため、それにちなみ、「慶応3年生まれ」の人物に着目し、『めさまし草』を一つの柱に据えた。この展覧会では、過去のある一点に焦点を当てるというよりは、さらに昔から現代まで繋がる時間を表現したいという思いがあった。そのため、デザイナーの方との相談のなかで、カタログのデザインには「渦」を採用し、カタログにおさめられた年表も何段階かの帯状にすることによって時間の流れを表現した。(当初は蛇腹の年表を作る予定であった)袖にかかるほど多くの情報を詰め込んだカタログである。

◎CatalTo手のぬくもり・こだわり賞(板橋区立美術館)
『世界を変える美しい本 インド・タラブックスの挑戦』
・プレゼンターから
 タラブックス出版社は、手工芸品のように美しい本を作ることで有名なインドの出版社あるが、それ以外にも、少数民族のアーティストによるワークショップを行い、彼らに著作権の概念を教え、正当な報酬を得られるようにするなどの社会的な貢献も行っている。
 このカタログはスリーブに入っているが、スリーブから取り出すとカラフルな世界が顔を出す。カタログの中身は、写真、タラブックスの作品リスト、創業者のインタビューなど盛りだくさんである。

・受賞者から(板橋区立美術館・松岡希代子)
 タラブックスの展覧会を行った時期は、本来、板橋区立美術館は改修のため、閉館しているはずであった。しかし、改修の時期が延び、急遽開催することになった展覧会であった。なぜ、そんなに急にタラブックスの展覧会を開催することができたかといえば、その秘密は板橋区立美術館が開館3年目から続けてきた絵本の原画展(今年で38回目を迎える)にある。絵本の原画展は、展覧会のメインストリームではないが、板橋区立美術館も「末端」の美術館であり、その「末端」であるがゆえの「すみっこ力」を活かした展覧会であるといえ、そのなかで世界中のイラストレーターや出版社と密な関係を丁寧に築きあげてきたからであった。2013年には、タラブックスの中心人物であるギータ・ウォルフさんを招聘し、イラストレーター向けのワークショップを開いたこともあった。
 そのため、タラブックスの展覧会を行いたいという企画を持ちかけたときも、話はスムーズに運んだ。タラブックスの出版物の3割程度は、木綿の古着を再利用した紙に、シルクスクリーンで刷った手作りものであり、タラブックスの代名詞のようなものであるため、この展覧会のポスターは、インドにてシルクスクリーンで刷ることに決まった。そのポスターの効果は絶大であり、一か月に18000人の来場者、3100冊の図録売り上げを記録した。


(〔3〕につづく)
(2018年9月22日 文責:石川真奈実)

CatalTo2017 授賞式・パーティー開催〔3〕

日時:2018年7月27日(金)16:00-19:00
場所:東京大学教養学部駒場キャンパス 18号館4階コラボレーションルーム1およびオープンスペース
出席者:学内外関係者45名
活動報告:(〔2〕のつづき)

◎CatalToオリンピック文化プログラム賞(小平市平櫛田中彫刻美術館)
『特別企画 メダルの魅力』
・プレゼンターから
 2020年の東京五輪に向け、政府および東京都のレベルで、オリンピックに関わる文化プログラムを展開することになっている。その文化プログラムに参加している展覧会を昨年から探していた。そのなかで見つけたのが、薄いにも拘わらず充実した本展覧会カタログであった。
 この展覧会は、近代から現代にいたるまでの日本のメダル彫刻を150点ほど集めたものである。オリンピック文化プログラムのなかで、「メダル」という「ど真ん中」を取り上げた企画力の高い展覧会となっている。岩村透の作らせた日本近代では最初の方と思われる賞のメダルが含まれており、水準の高いものであったことが窺われる。

・受賞者から(小平市平櫛田中彫刻美術館・藤井明)
 平成26年に藤井浩祐という彫刻家の展覧会を行ったことがあるが、藤井浩祐はメダル・筆皿・文鎮など多種多様な作品を残している人物であった。展示品を借りに行った際に、藤井浩祐以外のメダルも見せてもらえた。日本では、昭和初期にスポーツが盛んとなった結果、近代の彫刻家の手でメダルが作られるようになった。メダル独特の光沢、手にのせた感触、丸・四角というメダルの形のなかで工夫を凝らしたデザインなどの、立体彫刻とは別のメダルの魅力を感じ、いつかメダルの展覧会を行いたいという思いが芽生えた。
 メダル蒐集家の協力も得て、今回の展覧会開催に漕ぎつけた。しかし、小平市平櫛田中彫刻美術館は2年に1度特別展を行うことになっており、2017年は谷間の年で、あまり予算をかけることができなかった。そのため、カタログのメダルの写真など、撮影はすべて自ら行った。
 また、メダルとはもともと受賞者がいるものである。受賞者は、メダルの作家やデザインにはあまり目を向けない。それがいったん美術コレクターの手に渡ると、メダルの作られた契機よりも、作家やデザインを重視するようになる。持ち主によって価値が変化するという意味では、メダルには宗教芸術と似たような機能があるようにも思われる。

◎CatalToクロスジャンル賞(自転車の世紀展事務局)
『自転車の世紀展(THE CENTURY OF BICYCLE)』(郡山市立美術館/茅ヶ崎市美術館/佐倉市立美術館)
・プレゼンターから
 誰にとっても身近な自転車を機軸に、美術・写真・漫画・生活文化・テクノロジーといった様々なジャンルへと見る者を誘う、自転車の文化の奥深さを紹介した展覧会であった。この展覧会カタログを推薦した理由は以下の三点に集約できる。一つ目は、様々なジャンルと自転車の関わりが丁寧に述べられている点である。二つ目は、大人から子供まで楽しめるレイアウトや文章である点が挙げられる。三つ目は、巻末にまとめられた自転車の歴史が充実している点である。様々なジャンルに跨ったカタログであるため、読者がもともと持っていた興味関心から、さらに新たなジャンルへと誘っていく魅力がある。

・受賞者から(郡山市立美術館・佐藤秀彦)
 昨年は、自転車が発明されてから200周年という記念すべき年であり、三箇所の美術館で協力し、展覧会を行った。展覧会は、①自転車の歴史、②描かれた自転車(19世紀の鮮やかなポスター、明治時代の自転車など)、③現代の自転車ファッション、④自転車の未来(最新の電動アシスト付き自転車やスバルがモーターショーに出したコンセプトバイクなど)という四つのパートから成っていた。
 この展覧会カタログは、小中学生でも買える価格設定にするため、むだのないB5変形のサイズを採用するなどし、1000円での販売を実現した。各章のアイコンを自転車のデザインにし、右上の角をめくっていくと自転車が動くぱらぱら漫画になっている遊び心もある。また、来場者と自転車を結び付けるため、地元の自転車工場の見学会や、変わった自転車の試乗会、自転車で市内を巡る催しなども開催した。
 自転車は、シンプルかつミニマムなデザインであるが、人が跨ってペダルを漕がなければ完成しない。だからこそ、これからも発展の可能性がある乗り物であり、21世紀は自転車リバイバルする「自転車の世紀」になるかもしれない。

(〔4〕につづく)
(2018年9月22日 文責:石川真奈実)

CatalTo2017 授賞式・パーティー開催〔4〕

日時:2018年7月27日(金)16:00-19:00
場所:東京大学教養学部駒場キャンパス 18号館4階コラボレーションルーム1およびオープンスペース
出席者:学内外関係者45名
活動報告:(〔3〕のつづき)

◎CatalTo一般にオススメで賞(目黒区立美術館)
『ヨーロッパの木の玩具(おもちゃ)展――ドイツ・スイス、北欧を中心に』
・プレゼンターから
 第一に、可愛らしく色鮮やかな木の玩具の表紙が魅力的である。手に取って開いてみれば、自由なレイアウトでのびのびと、玩具の写真が掲載されている。それも、ただ玩具の写真があるというのではなく、どうやってその玩具を動かすのかが解るように工夫されていて、カタログのうえで自分が玩具で遊んでいるような気持になれる。もちろん、玩具の主要工房・年譜・地図・論文も掲載されており、情報量も多く、簡潔ながら要点を押さえたカタログである。目黒区美術館は昨年も総合賞を受賞しており、昨年に引き続き、とても素晴らしいカタログを作成されたと思う。
 可愛らしい表紙のこのカタログは、幅広い人々に訴えかけ、「カタログを手に取ること」への入り口となるものであるといえよう。

・受賞者から(目黒区立美術館・加藤絵美)
 昨年は、目黒区美術館の開館30周年であった。また、この展覧会は、アトリエ・ニキティキ(玩具の会社)の協力のもと行われた3回目の展覧会である。(ニキティキさんとは、スイスのネフ社で作られているリボン型の積み木(ネフスピールなどを中心とする)の遊び企画を毎年行ってきたという繋がりがある)
この展覧会は、現代の木の玩具の多様性を切り口とした。展覧会には、積み木やパズルといった遊び方を紹介する章もあった。また、ヨーロッパで木の玩具が盛んに作られるようになった背景として、幼児教育の祖・フレーベルの提唱した知育玩具「恩物」にも触れた。日本で初めて幼稚園を開いた御茶の水女子大学からも作品を借りた。さらに、技術的な側面にも着目した。そこでは、ドイツのエルツ地方に伝わるライフェンドレーンなどを取り上げた。
(くるみ割り人形などが有名)エルツ地方を専門とする先生の協力も得た。展覧会では、実際にエルツ地方から職人を招き、ライフェンドレーンの機械も輸入し、実演を行った。
カタログに関しては、商品カタログにならないように注意した。たとえば、現代の玩具と古い時代の玩具を融合していることを示せるように工夫した。
◎CatalToデザイン賞(サントリー美術館)
『六本木開館10周年記念展 国宝《浮線綾螺鈿蒔絵手箱》 修理後初公開 神の宝の玉手箱』
・プレゼンターから
 まず、表紙特殊印刷された蒔絵手箱の光沢・質感に目を奪われた。手に取ってカタログを開いてみると、右、左と二段階に開くという特殊な装幀をしており、その開け方はまるで手箱の蓋を取る動作であるかのようだった。このカタログは、図版の質・解説が充実していることに加えて、カタログが掲載されている写真を眺める図録に止まらず、作品を身体的に味わう手立てにもなり得ることを証明していよう。

・受賞者から(サントリー美術館・佐々木康之)
 この展覧会は、六本木に移動してから10周年を記念したものであった。そこで、サントリー美術館の所蔵品のなかで唯一の国宝である「浮線綾螺鈿蒔絵手箱」を中心とした展覧会・カタログを作成しようとしたいと考えた。(ちょうど、浮線綾螺鈿蒔絵手箱を修理したタイミングでもあったため)
 七宝のなかでも手箱は豪華であり、その手箱のなかでも鎌倉期のものは豪華であり、その鎌倉期のなかでも「浮線綾螺鈿蒔絵手箱」は特別なものであるといえよう。展覧会名には、一般の人にもキャッチ―な「玉手箱」の語を用いた。
 日本人はそもそも箱が好きである。蓋があり中身が解らないことから、呪術にも用いられ、神への奉納品にもなり、もちろん普段の容れ物の役割も果たしてきた。
 カタログでは、玉手箱を開けることを身体的に体験してもらえるような工夫を凝らした。また、浮線綾螺鈿蒔絵手箱は沃懸地(いかけじ)という金の粉末を蒔き詰めた手法が用いられているため、その色を再現するのは苦労した。さらに、カタログを手箱に見立てたかったので、外側にはなるべく文字を入れないという工夫をした。

(〔5〕につづく)
(2018年9月22日 文責:石川真奈実)

CatalTo2017 授賞式・パーティー開催〔5〕

日時:2018年7月27日(金)16:00-19:00
場所:東京大学教養学部駒場キャンパス 18号館4階コラボレーションルーム1およびオープンスペース
出席者:学内外関係者45名
活動報告:(〔4〕のつづき)

◎CatalToカタログを持って、出かけま賞with漱石(鎌倉文学館)
『夏目漱石生誕150年特別展 漱石からの手紙 漱石への手紙』
・プレゼンターから
 可愛らしいデザインと手に取りやすいサイズ感に惹かれた。巻末には、鎌倉周辺の漱石ゆかりの地の地図が掲載され、そのまま周辺を散策することも可能である。内容ももちろん充実しており、文学研究者にとっては大事な一時資料となる手紙が、翻刻されているのは大変便利である。

・受賞者から(鎌倉文学館・小田島一弘)
 鎌倉文学館は観光地にあり、旧前田侯爵家の別邸を再利用しているため、年10万人ほど訪れる来館者のうち、7割程度は文学とは関係のない方である。そのため、予備知識なしに文学に親しんでもらえるような展示を心掛けている。
 手紙という題材は、作家の心を知ることのできるものであるため、一般の来館者にも親しみやすいテーマであるといえる。なかでも、漱石は筆まめであり、明治時代の人物のなかでは現代と同じような(読みやすい)手紙を書く人物である。
 鎌倉文学館は展示室が狭く、100点ほどの展示品を置くともういっぱいになってしまうので、テーマをしぼって展示を行う必要がある。そこで、テーマとして漱石の手紙が選ばれた。また、漱石研究が盛んに行われ、資料がよく保管されており、その半生を手紙で辿ることができる人物である点もテーマにふさわしかった。
 鎌倉文学館のカタログは5~6年前から、A5サイズ(横)を採用している。これは、観光の途中で文学館によったお客さんにも買ってもらえるように、女性のハンドバッグに収まるサイズを意識してのことだ。A5の横置きなのは、縦置きにするとさみしいスペースができてしまううえ、資料の見方の順番がわかりにくくなってしまうためである。
 また、このカタログで工夫した点は、ただ単に手紙を翻刻すだけではなく、手紙本体の文字と見較べて読むことができるように印をつけたとことである。また、手紙のなかで人物名が出てきたときは、簡単なプロフィールをつけ、文学に詳しくない人にも解りやすいように心を配った。

※CatalTo国際交流賞(東京藝術大学大学美術館)
『シルクロード特別企画展 素心伝心 クローン文化財 失われた刻の再生』
 文化財のクローンを作り、芸大美術館のなかで展開するという、学術と展覧がうまく融合した展覧会であった。そのうえ、日中両国の緊密な協力も窺うことができた。
 当日は、関係者の都合で授賞式はご欠席であったが、このカタログの価値を授賞式で
皆さんにご報告した。


◎閉会の辞(東大比較文學会会長・菅原克也)
 東京大学にはキャンパスがいくつかあるが、そのなかで駒場は「文理融合」「inter disciplinary(学際/専門を跨ぐ)」といった特徴を持っている。その駒場を拠点とする東大比較文学会から出す賞は、なにかしら「跨いだもの」であるべきだと考えるが、今回の受賞カタログを見てみると、多彩であり、文理融合しており(狩谷掖斎から自転車まで)、対象とする年齢層も幅広く、地域性にも富んでおり、大変駒場らしい賞であるといえる。また、学芸員やデザイナーの方々の話から、カタログを作るという行為もまた、様々な領域・専門・関心の人を巻き込んだものであることが実感できた。

 CatalTo 2017 記念パーティーには、学芸員・デザイナーの方々をはじめ、授賞式参加者の多くが出席した。入口付近のテーブルには、CatalTo 2017の受賞カタログのほか、惜しくも受賞を逃したノミネートカタログ、さらには昨年度のCatalTo 2016の受賞カタログも飾られた。彩り豊かなカタログを手に取りながら、話に花が咲く光景も見られた。部屋の奥には軽食と飲み物が用意されており、グラスを片手に、より身近な距離感で、学芸員・デザイナーの方々と交流が行われた。また今年度の本部長・松枝佳奈氏、院生委員会委員長・朴承民氏からの挨拶もあり、副委員長・李範根氏をはじめ、大奮闘のメンバーに皆でその労をねぎらった。
 最後に板橋区立美術館の松岡氏より、「飛び入り」のご挨拶を頂き、何よりもこの賞が若い院生たちの活動から生まれていることを、現場の人間として嬉しく思うとのお言葉があった。それはCatalTo本来の意義をご理解下さっているというメッセージとして、一同何より嬉しく伺ったのである。
こうして楽しい夏の夕べは、今年もまた盛況の裡に幕を閉じたのであった。
33773110.jpg

(2018年9月22日 文責:石川真奈実)

2020年2月18日

CatalTo2018 授賞式・パーティー開催〔1〕


日時:2019年7月26日(金)15 : 50 - 19 : 00
場所:東京大学教養学部駒場キャンパス18号館4階コラボレーションルーム3およびオープンスペース
出席者:学内外関係者51名
活動報告:15 : 50 - 18 : 00 CatalTo2018授賞式
(於:東京大学教養学部駒場キャンパス18号館4階コラボレーションルーム3)
18 : 00 - 19 : 00 CatalTo2019記念パーティー(於:東京大学教養学部駒場キャンパス18号館4階オープンスペース)

CatalTo2018においては、受賞カタログの作成に携わられた担当学芸員の方々や関係者の方々に加え、受賞カタログが紹介している展示作品を制作された作家の方々にもお越しいただき、カタログ作成、そして作品制作の現場について、今年もお話を聞かせていただいた。この式典に先立って6月7日に行われたCatalTo2018において、受賞カタログを選定した院生、教授が、それぞれが感じた受賞カタログの魅力を発表した。そしてそれに対しての担当学芸員の方々や作家の方々のご意見を伺えたとても興味深い機会であった。
以下はご挨拶、開会の辞、それぞれの受賞カタログへのプレゼンテーションと、担当学芸員・関係者・作家の方々のお話、閉会の辞をまとめたものである。(以下、敬称略とさせていただきます)

ご挨拶(東京大学比較文學會会長 菅原克也)
 CatalToの活動は、学生である大学院生が自身の目で「良いもの」を見つけ出し、それについて「語る」ことについて学ぶ場となっている。またCatalTo表彰式の場は、大学院生が、経験豊かでありながら現場において大変苦労をされている現役の学芸員の方々や展覧会関係者の方々の生の声をきくことができる「実地の学び」の一環とさせていただいており、大変貴重な機会である。

開会の辞(東京大学比較文學會編集委員・CatalTo担当 今橋映子)
 CatalToの活動および式典には東大比較文學會、展覧会・カタログ評院生委員会、駒場博物館展覧会カタログ資料室の三つの組織が関わっている。現役の院生から成る展覧会・カタログ評院生委員会の活動としてはまず、駒場博物館の展覧会カタログの蔵書をもとに、個々の院生がその専門を活かして展覧会・カタログ評を執筆し、それらを、50年以上の歴史をもつ『比較文學研究』に年間4本投稿していることが挙げられる。また一年間に全国で開催される展覧会の実態を調査し、毎年約250冊のカタログを新たに駒場博物館の蔵書として選定することも行っている。さらにこのCatalToの式典で紹介される受賞カタログを、委員の間でのプレゼンテーションを通して選定し、そのカタログを紹介する腰帯を独自に作成するなどといった活動を行っている。
 駒場博物館の展覧会カタログ資料室は、今後も永く駒場、そして日本に存在し続けるアーカイヴである。展覧会カタログとは、学芸員の方々が苦労をされ、企画された展覧会が終わっても残る、一つの財産である。そして研究者である我々はそれらのカタログを、ある領域の研究動向を知るひとつの大きな助けとしても活用させていただいている。
そのような中、このように大変おもしろい出版物である展覧会カタログを単にアーカイヴ化するというのはもったいないという思い、また展覧会カタログにまつわる動向を応援する気持ちを伝えたいという思いから始まったのがCatalToである。CatalToの活動の一部である批評という行為には常に責任が伴うということを、学生が自覚しながら学ぶ機会を、毎年お越しくださる学芸員の方々、関係者の方々に与えていただいている。また個人としては、若い学生が個々の斬新な視点で展覧会カタログを発掘することに期待もしている。

(〔2〕につづく)
(2020年2月18日 文責:中西麻依)

CatalTo2018 授賞式・パーティー開催〔2〕


日時:2019年7月26日(金)15 : 50 - 19 : 00
場所:東京大学教養学部駒場キャンパス18号館4階コラボレーションルーム3およびオープンスペース
出席者:学内外関係者51名
活動報告:(〔1〕のつづき)

◎CatalTo2018学術賞(福島県立博物館)
『戊辰戦争一五〇年』
・プレゼンターより(東京大学準教授 出口智之)
 戊辰戦争の歴史は、これまでロマンティシズムをもって語られるか、敗者の悲惨さが強調されるかたちで語られることが多かった。しかしこのカタログにおいては、薩長の側からでもなく、政府軍の側からでもなく、敗者の側から学術的に、そして客観的に事実をとらえようとする試みが実践されていることが感じられ、感動した。また戦闘の経過、それに加わった一人ひとりの人物、敗戦処理、戦後の慰霊や回想に至るまでを完全に網羅したカタログである点に衝撃を受け、「戊辰の戦役を目の当たりにせよ」とカタログの腰帯に書かせていただいた。またこのカタログは、敗者側に歴史、文化、文学という観点から光を当て、その活躍を追うことで、会津、二本松出身の、今日名が知られていない文化人を紹介する貴重なものにもなっている。

・受賞者より(福島県立博物館 阿部綾子)
 この展覧会は福島県立博物館、新潟県立歴史博物館、仙台市博物館の三つの館の共同企画として、約2年間を費やして準備した企画展である。戊辰戦争における出来事、当時の人々の視点、歴史背景、戦争の経過を、感情表現を排して客観的にそして丁寧に描写することを一つの目的としてきた。この企画展を組織した三館は敗者側、または劣勢に立たされた潘が本拠地としていた場所にあるという点で共通しており、明治150周年という節目に際し、敗者に注目しながらも戊辰戦争という一つの観点を通して、丁寧にその事実を紹介するということに、三館で手を取り合って尽力した。
 工夫した点の一つとして、カタログの表紙は写真や図、サブタイトルなどを排することで、シンプルに「戊辰戦争一五〇年」としたことがある。このことについては、敗者の視点からの戊辰戦争を象徴するイメージがなかなか見つけられなかったという事情もある。しかしそれ以上に、それぞれの地域において異なっている戊辰戦争のありかたに注目し、また一見すると一枚岩のようにとらえられがちな列藩同盟、会津藩の中にある多様性の存在にも注意した結果、どのイメージにも偏ることのないシンプルな表紙に決定したのだという点を工夫のひとつとして紹介したい。
 また展覧会、カタログの両方において、渋谷源蔵という会津藩士をナビゲーターとして登場させ、その個人が体験した出来事、また当時の出来事に対する渋谷源蔵の感想を逐次具体的に盛り込むことで、当時の人々の様子、視点を紹介することにも配慮した。

◎総合デザイン賞(印刷博物館)
『天文学と印刷―新たな世界像を求めて』
・プレゼンターより(修士課程 廣川千瑛)
 とてもたくさんの方々が、この展覧会カタログ、そして展覧会のチラシのデザインについての賛辞を口にしていた。その理由の一つとして、コールドフォイルという印刷技法によって、「天文学」という言葉から私たちがイメージするような、きらびやかなイメージの表現が達成されていることが挙げられるだろう。またチラシを集めて並べたくなるような仕掛けも見事である。集めたい、並べたい、見せたい、自慢したいという、人の知に対する欲望が刺激され、自分も天文学と印刷の世界にとりこまれていくように感じた。個人としては印刷博物館がとても好きであり、以前にも5回は訪れているが、人文知と権力がますます緊張関係のなかに置かれるなかで、誰が印刷し、それが誰の手に渡り、読まれてきたのかという構造を視覚的、そして学術的に見せてくれるこの博物館は貴重であり、これからも必要な館であり続けると強く確信している。

・受賞者より(印刷博物館 石橋圭一)
 展覧会についての来場者の方の意見をSNSやアンケートなどから得る機会はあるが、このような場において直接感想を聞けるのは嬉しいことである。印刷博物館では、印刷の歴史が人類にどのような影響を及ぼしたのかということを、様々な事例を用いて紹介することを目的として企画展を構成している。おおまかな印刷の歴史としては、15、16世紀にヨーロッパで生まれた活版印刷から、インターネットの登場を経て、主要なメディアが大きく変わるということがある。今回の展覧会ではこれを掘り下げて、印刷による本が爆発的に普及した時代に、天文学、特にコペルニクスの地動説が紹介されたことを扱った。このように教科書内では簡潔に説明される出来事であっても、その歴史背景として、メディアの変換と、コペルニクスの地動説の印刷、発表に関わった人物の存在についても触れることで、当時の学者と印刷者それぞれの人物像と、それらの人物の関係性についても紹介することを目的に構成した。

(〔3〕につづく)
(2020年2月18日 文責:中西麻依)

CatalTo2018 授賞式・パーティー開催〔3〕


日時:2019年7月26日(金)15 : 50 - 19 : 00
場所:東京大学教養学部駒場キャンパス18号館4階コラボレーションルーム3およびオープンスペース
出席者:学内外関係者51名
活動報告:(〔2〕のつづき)

 この展覧会カタログのデザインは中野豪雄さんによるものであり、中野さんはCatalToにおいて常連の受賞者である。デザインについて工夫した点の一つとしてやはりコールドフォイル印刷があるが、これは一般的な箔押しによる印刷よりもコストを抑えながら色彩にヴァリエーションを持たせることのできる方法である。表紙の金色の部分にもこの方法が用いられている。またコデックス装によって装丁を仕上げることで、本の背表紙は表紙でくるまずあえて剥き出しの状態になっているが、これによってページの開きがよくなり、カタログが閲覧しやすいものになっている。コデックス装は装丁の強度に弱点があるが、カタログのデザインを優先してこの方法を選択した。また、デザイナーの方と制作の方と折衝しながら、背表紙が黒色になるようページの刷りや折りを調整し、シンプルなつくりの中で繊細なデザインを達成する工夫をした。カタログを作ることはとても大変な作業だが、CatalTo表彰式のような、他の人の意見を聞くことができる場は、より良いカタログが生まれるきっかけを作り出し、今後のカタログ文化をより豊かにするものになると考えており、応援したいと思う。

◎クロスジャンル賞(横浜美術館)
『駒井哲郎―煌めく紙上の宇宙』
・プレゼンターより(博士課程 佐伯綾稀)
 今までも駒井哲郎についての展覧会はたくさんあったが、このカタログは駒井の、ジャンルを超えた活動の展開に焦点を当てている点で独創的である。カタログの冒頭では、駒井の制作初期の動向と並行してアルブレヒト・デューラーやオディロン・ルドンの作品が紹介されているが、自分の研究対象であるイタリア未来派のボッチョーニも同じくこのような作家を参考にしていることを考えると、駒井の制作動向もより一層おもしろく感じられた。駒井が実験工房などで作曲家や写真家とのコラボレーションを行っていたことや、舞台美術をも手掛けていたことはこの展覧会で初めて知り、興味深かった。駒井の晩年の作品には色彩の爆発を思わせるものもあり、胸に迫るものとして感じられた。
 展覧会カタログは読みごたえがあり、駒井と関連作家の間の書簡も紹介されており、そこから駒井の人柄が感じ取れた。この一冊で駒井哲郎が丸ごとわかるというような素晴らしいカタログである。

・受賞者より(横浜美術館 片多祐子)
 今回の展覧会では、これまで主に銅版画を一途に追求した作家として理解されてきた駒井の作品の、領域横断的な魅力に焦点を当てることを目標とした。文学者、詩人、音楽家などの多ジャンルの芸術家との交流という観点を軸に構成したため、クロスジャンル賞を受賞できてこの目標が達成されたように感じている。
 工夫した点として、駒井自身が書いた文章の魅力を伝えるため、駒井の言葉と図版を同時に鑑賞できるページ構成を行った点、また他ジャンルの作家との書簡を書き起こして掲載した点がある。苦労した点としては、駒井に関わった作家が多様なジャンルにわたり、その数も多かったため、それぞれの作品などについて著作権の保持者を探し求め、許可を取ることが困難であったことが挙げられる。この展覧会に際して、小さな失敗や反省もあったが、受賞を励みに今後も展覧会の企画を行っていきたい。

◎クロスジャンル賞(弥生美術館)
『鏡花人形―文豪泉鏡花+球体関節人形』
・プレゼンターより(東京大学特任講師 堀江秀史)
 泉鏡花の文学作品の魅力を言語的な制約から解き放つことには、近現代の芸術家たちの作品が大きく力を貸してくれたと言える。鏡花の文学がもつ懐かしさ、優しさ、怪しさ、ほの暗さ、色彩といったイメージは版画や映像などのかたちをとることでより広い人々に共有される。この展覧会カタログはそうした試みの新たな成果であり、鏡花文学の闇と幻に、言葉や平面芸術とは別の開路から潜り、浸る快楽を与えてくれるものであると言える。

(〔4〕につづく)
(2020年2月18日 文責:中西麻依)

CatalTo2018 授賞式・パーティー開催〔4〕


日時:2019年7月26日(金)15 : 50 - 19 : 00
場所:東京大学教養学部駒場キャンパス18号館4階コラボレーションルーム3およびオープンスペース
出席者:学内外関係者51名
活動報告:(〔3〕のつづき)

 また文学面の監修は都留文科大学教授の野口哲也先生が主に引き受けてくださるなど、まさにクロスジャンルでありながら、作品も、文学の側面も大変充実した展覧会となった。初めて作家の方々の作品を目の前にしたときに、それらの人形は、人間ではない何かほかの生きものであるという印象を持った。一方で、泉鏡花が描く女性も、妖怪なのか魔物なのか、あるいは神様なのか、最後まで正体が分からない存在である。このような体験から今回のようなクロスジャンル的な展覧会、そして展覧会カタログが誕生した。
 カタログ作りで苦労した点としては人形を撮影するロケ地探しがあり、弥生美術館からごく近く、撮影に適した場所として東京大学本郷キャンパス内の三四郎池も候補地に含まれていたが、結局利用することが叶わないなどの困難な点もあった。

◎薄くても良いで賞(栃木県立美術館)
『工芸の教科書』
・プレゼンターより(日本学術振興会特別研究員 松枝佳奈)
 CatalToで選定される展覧会カタログには大きくて分厚いものが多い傾向があるように思われるが、このカタログの特徴は、小学生の時に使っていたノートや教科書を思わせるようなシンプルな装丁とその薄さである。しかし、その外観とは打って変わって、カタログの中では、小さな図版がたくさん用いられ、栃木県特産の工芸品である益子焼の制作工程などが、丁寧に分かりやすく説明されている。ページをめくっていくと、工芸の知識がない入門者でも、工芸の材料から制作工程までといった工芸の全てが分かるようにつくられているやさしいカタログである。それと同時に、専門家や研究者にとっても、傍らにおいておきたいと思えるようなものになっている。

・受賞者より(栃木県立美術館 鈴木さとみ)
 見た目は薄くても内容はあついカタログを目指した。近年、明治の工芸の超絶技法に注目が集まる中で、近代工芸について、その制作過程における苦労や、素材の特性、技法による作品の魅力を伝える展覧会を開催したいと思った。公立の美術館であるため、予算や出品できる作品などにも制約がある中で、一つ一つの出展作の個性に注目した展覧会を構成することを心がけた。栃木県にゆかりのある現代の作家の方々のアトリエを訪ねて、時にはそこで体験しながら、その制作の難しさ、特性、そしてそれらに由来するそれぞれの作品の個性を学び、展覧会で伝えることに努めた。
 初めは無料の小冊子として配布しようとして用意していた鑑賞ガイドは、伝えたいことを盛り込んでいくうちに内容が膨大になり、その内容を展示室に反映することも困難な程になったため、販売用のカタログにつくり替える方向に舵を切った。また、カタログの読みやすさを追求した結果、より大きな装丁に変更した。
 カタログの内容は、現代の作家の方々へのインタビューをもとに構成しているが、作家の方々は驚くほど細かにその制作方法を伝授してくださり、制作に関する情報漏えいが心配になるほどであったが、そのことについて、技法が知られたところで制作できるというわけではないという意見や、制作者の裾野を広げ、その先にある表現の領域で他の作家と競い合いたいというような作り手の言葉が聞かれ、新鮮な体験であった。
 このカタログは、今まであまり作品集を発表してこなかった現代作家の方々による作品を紹介できた点について、作家の方々から感謝の言葉をもらえたことに加え、展示作家の方々の、作品の発信についての意欲を高めるきっかけにもなったのではないかと思っており、結果としては栃木の文化の底上げにも貢献できたのではないかと考えている。

◎一般にもオススメで賞(東京都庭園美術館)
・プレゼンターより(博士課程 モハッラミプールザヘラ)
 この展覧会カタログはまず、デザインがとてもかわいく素敵である。一目見ただけでは椅子とは気づかない程の、芸術作品の写真が表紙になっている。カタログを開くと見開きページいっぱいに、まるで行進しているかのように動物たちが列をなしている。作り手たちの豊かな想像力を伝えるこのカタログは、眺めるだけでもとても楽しいものであるが、カタログの始めに付されているブラジルの地図や民族についての解説を読むと、ブラジルにある多様性についても知ることができるものになっている。またカタログに含まれる論文を読んでみると、人間と自然環境との関わりについて、また伝統と現代というテーマについても知ることができ、これらについて考えるきっかけを与えてくれる。


(〔5〕につづく)
(2020年2月18日 文責:中西麻依)

CatalTo2018 授賞式・パーティー開催〔5〕


日時:2019年7月26日(金)15 : 50 - 19 : 00
場所:東京大学教養学部駒場キャンパス18号館4階コラボレーションルーム3およびオープンスペース
出席者:学内外関係者51名
活動報告:(〔4〕のつづき)

・受賞者より(東京都庭園美術館 大木香奈)
 この展覧会はブラジルの日本人移民110周年を記念するもので、東京都庭園美術館と埼玉県立近代美術館の二館において開催している。会場では、ブラジルに拠点を置くベイ出版という会社が有する、ブラジルの先住民によってつくられた椅子のコレクションを紹介したが、これらの作品はブラジル国内でもあまり紹介されてこなかった。
 展覧会カタログに用いられている、動物が行進をしているかのような写真は、ベイ出版から提供された写真を用いているが、じつは全ての所蔵作品が同じ角度で撮影されており、これらの写真をカタログ内に盛り込むことには苦労をした。苦肉の策として生み出されたのが、このような動物たちが行進しているかのような構成であった。
 これらの椅子は、元々は儀式などに用いるために作られた神聖なものであるという背景をもつが、展覧会ではそのデザイン的な魅力を分かりやすく伝えることを心がけた。動物の行列というかたちは、結果的にこの目的に合うものになっていると思う。

(ここまでの文責:2020年2月18日 博士課程 中西麻依)


◎世代を超えるメッセージ賞(千葉市美術館)
『1968年―激動の時代の芸術』
・プレゼンターより(教養学部 東崎悠乃)
 1968年は自分にとって、両親が生れるより前の時代であり、自分から隔たりを感じる時代であるが、年代をピックアップしている点で面白い展覧会であると思った。時代の混沌と毒々しさを伝えてくれる刺激的なカタログである。芸術だけでなく、社会の様相まで写し込むという意味で刺激的である。1968年を経験した人にも、経験したことがない人にも手に取って頂きたいカタログである。

・受賞者より(千葉市美術館 藁科 英也)
 この展覧会を企画した学芸員の水沼啓和氏は昨年の12月20日に急逝し、私はその代理で受賞した。彼が自分の展覧会に積極的になったのは、2011年の秋に開催された『瀧口修造とマルセル・デュシャン』展からだった。その後、2014年の『赤瀬川原平の芸術原論』展を経て、昨年の『1968年―激動の時代の芸術』展へ至った。今回受賞の対象になった展覧会について私が感じたことは、この展覧会がテレビ的な構成になっているということだった。今回の展覧会の構成を見ていると、すべての出来事がテレビ的であり、それを当たり前のように思って育った人が構成した展覧会であると思った。それを本人に伝えたかったが、そのままになってしまった。皆さんに御礼を申し上げたい。

◎これっくらいではすまないで賞(東京都美術館)
『BENTO おべんとう展―食べる・集う・つながるデザイン』
・プレゼンターより(早稲田大学博士課程 町田樹)
 このカタログはお弁当を、人と人をつなげるメディアであると捉え、様々な角度から、人とお弁当が紡ぐ食文化について改めて考える機会を提供してくれる一冊である。このカタログにおいては、通常の展覧会カタログである「いただきます」編と、展覧会会場で行われたワークショップの模様を収録するために展覧会後に製作された「ごちそうさまでした」編の二冊に分冊されている点が特徴的である。「ごちそうさまでした」編は、作品や展示物はもちろん、展覧会というイベント自体をアーカイヴ化している。従来のカタログには見られなかった新機軸が盛り込まれているカタログである。

・受賞者より(東京都美術館 熊谷香寿美)
 東京都美術館は2012年にリニューアルをして、学芸員が企画をする展覧会を一年に一本ずつ開催するようになった。その中では、「現代作家」「アーツ&ケア」「アーツ&ライフ」の三つのテーマを設けている。今回の『BENTO おべんとう』展は「アーツ&ライフ」のテーマにあたる展覧会であり、食を通じてコミュニケーションを考えることを目的としている。カタログのデザインに関しては、二冊組で、二つのカタログをまとめるスリーブに穴が空いており、展覧会のロゴマークが見えるようになっている。またカタログと、カタログをまとめるスリーブの角を丸くすることにもこだわった。東京都美術館は、美術館が考え、提示することに対して、そこに足を運ぶ人それぞれが自身の方法で理解して、考えを深めることを大事にして企画展を作っている。この展覧会が若い院生の人たちに選ばれたということに感謝する。

(〔6〕につづく)
(2020年2月18日 文責:金洲鉉)

CatalTo2018 授賞式・パーティー開催〔6〕


日時:2019年7月26日(金)15 : 50 - 19 : 00
場所:東京大学教養学部駒場キャンパス18号館4階コラボレーションルーム3およびオープンスペース
出席者:学内外関係者51名
活動報告:(〔5〕のつづき)

◎カタログヒットメーカー賞(LIXILギャラリー)
『海を渡ったニッポンの家具―豪華絢爛仰天手仕事』
『富士屋ホテルの営繕さん―建築の守り人』
『吉田謙吉と12坪の家―劇的空間の秘密』
『台所見聞録―人と暮らしの万華鏡』
・プレゼンターより(博士課程 金洲鉉、修士課程 南希宙)
 LIXILギャラリーのカタログは3年連続でCatalToにおいて選ばれており、さらに今年は4冊も選ばれた。LIXILギャラリーのカタログは、イラストを多用していて読みやすく手に取りやすい。そして、展覧会のテーマの選び方が独特で、生活に密着するものである建築や住まいに関する新しい視点を提供してくれる。薄いカタログでありながら、他の館のカタログに負けないくらい内容が充実している。

・受賞者より(LIXILギャラリー 筧天留)
 LIXILギャラリーの文化推進活動は1981年から始まった。展覧会の会場は10平米程の小さなスペースであり、ブックレットも80ページ程度の小冊子である。展覧会とは別に、カタログを書籍として流通させるため、カタログの中身は展覧会の内容を深める方向で作ってきた。この点は、他の展覧会のカタログとは異なる点であろうと思われる。私たちは、建築とその周辺をテーマにすることで、身近にありながらも、発見されてこなかった新しい世界、新しい視点を見つけ、皆さんと共有したいという思いで展覧会を企画している。ニッチでマニアックなテーマになる時もあるが、その際に助けとなるのがデザインであり、内容も魅力的で、分かりやすいものになるように作っている。また、私たちはこのカタログをある分野の入門書にしたいというスタンスで制作している。

◎大学美術館賞(武蔵野美術大学美術館・図書館)
『和語表記による和様刊本の源流 論考篇・図版篇』
『新島実と卒業生たち―そのデザイン思考と実践1981-2018』
・プレゼンターより(東京大学準教授 永井久美子)
 二冊において特出する点は、その印刷の再現性である。『和語表記による和様刊本の源流 論考篇・図版篇』には、版本の写真が原寸大で多数載せられているため、貴重な文章を実際に手に取っているかのような臨場感が味わえる。『和語表記による和様刊本の源流』を監修した『新島実と卒業生たち』のカタログと併せてみると、本は文字情報を伝えるだけでなく、形を持った美術作品であることに改めて気づかされる。近世の木版印刷を造本デザインの歴史の観点から捉えなおすという研究テーマが、教員と学生の創作活動にも結びついていることに美大らしさを感じた。美大の展覧会と聞くと収蔵品展と教員、学生の作品展という二つの柱を連想するが、実際にはその二つは連関するものである。武蔵野美術大学美術館・図書館は、美大の収蔵品が教育にどのように活用されているのかがよくわかるような展覧会を多く企画していると感じた。教育機関としての武蔵野美術大学の活動が広く伝わるように、今後もこのような展示を企画していただきたい。

・受賞者より(武蔵野美術大学美術館・図書館 西村碧)
 『和語表記による和様刊本の源流 論考篇・図版篇』は、文部科学省から助成金をいただいた研究事業の中で、5年間研究した成果を展覧会とカタログというかたちで発表したものである。2018年11月から開催し、展覧会カタログ二冊分のうち、まず図版編ができ上がり、半年遅れて論考編が完成した。展覧会は主に美術館で行われるが、美術品を扱う美術館と図書資料を扱う図書館が連携して展覧会や研究活動をサポートしている。『和語表記』展は美術館の中の造形研究センターで行われたものである。今まで近現代のデザインに関しては、あまり取り上げられてこなかったということもあり、最近はそのような、デザイン以前のものに関する研究が学内で行われている。このように、この展覧会に際して、明治以前のものに見られる日本の美意識を問い直す研究が行われた。カタログのサイズは、原寸大で史料を見せることを目的に決定した。まだ資料の復元作業が残されているが、今年中にその作業が完了する予定である。

(〔7〕につづく)
(2020年2月18日 文責:金洲鉉)

CatalTo2018 授賞式・パーティー開催〔7〕


日時:2019年7月26日(金)15 : 50 - 19 : 00
場所:東京大学教養学部駒場キャンパス18号館4階コラボレーションルーム3およびオープンスペース
出席者:学内外関係者51名
活動報告:(〔6〕のつづき)

◎一般来館者賞(ヒグチユウコ事務所)
『ヒグチユウコ画集 CIRCUS』
・プレゼンターより(博士課程 朴承民)
 駒場博物館で今年の4月から3か月間、2018年度において1年間の間に収集した展覧会カタログを、駒場博物館の来館者の方々に見ていただくことを目的に公開展示を行った。来館者アンケートで、人気のカタログ第一位に選ばれたのが『ヒグチユウコ画集 CIRCUS』であった。これは研究者と一般来館者のカタログを見る視線の違いを気づかせてくれたカタログでもあった。このカタログは展覧会会場で限定発売されたものであり、展覧会の思い出を持ち帰るという、記念としてのカタログの役割を充分果たしているものであると思う。

閉会の辞(東京大学准教授 出口智之)
 自身は明治時代の文学と美術の研究をしているが、カタログを研究に役立てようとした初めの経験は学部時代にさかのぼる。当時は資料、論文だけをコピーして持ち帰っていたが、本日の受賞者の皆さまのお話を伺い、カタログは単なる資料集ではなく、デザインや出版印刷、アートを含めた文化の最前線がその中に凝縮されているものであるということを強く感じた。そのような文化の最前線としてのカタログが各博物館、美術館、文学館で地道に、革新的につくり続けられているということに敬意を表したい。
ところで、自分の専門分野に関連して、幸田露伴が、1943年に講談社が出していた野間文芸賞を受賞した際のエピソードを紹介したい。そのとき75歳だった露伴は、講談社から受賞の連絡受けた際に、こう言ったと伝わっている。「 (幸田文にむかって)おい、野間のところで1万円くれると言っているが、お前いるか?」するとそれに応えて幸田文が「なくてもすむようには調えてございますが、あれば助かるものでございます。」と言う。それに対して露伴は「ではもらっておくよ。」と言って受賞を受け入れたということである。授賞式においては、講談社が「賞というものは、普通は与えるものでございますけど、私どもの賞は露伴先生に差し上げるのである、いや、差し上げるのですらない。もらっていただくのである。」と言っていたことが伝わっている。CatalToから受賞者の皆さまに差し上げられるものは、このカタログが好きだという熱い思いだけである。是非とも皆さまに差し上げたく、もらっていただけることを心より願っている。

(ここまでの文責:2020年2月18日 博士課程 金洲鉉)


CatalTo2018 記念パーティー

 CatalTo2018 記念パーティーには、学芸員、デザイナー、作家の方々をはじめ、授賞式に出席してくださった方々の多くが出席してくださった。入口付近のテーブルには、CatalTo2018の受賞カタログのほか、ノミネートカタログ、さらには昨年度の受賞カタログ、CatalPaの受賞カタログも展示された。彩り豊かなカタログを手に話がはずむ光景も見られた。部屋の奥には軽食と飲み物が用意され、グラスを片手に、より近い距離感において、学芸員、デザイナー、作家の方々と教員、学生が交流ができるなど、こちらも貴重な機会であった。
 パーティーの始めに、弥生美術館の『鏡花人形―文豪泉鏡花+球体関節人形』展に出展された人形作家の吉田良さまからご挨拶をいただき、その中では、CatalToの活動は作り手の立場にとってエネルギーになる、今後このような活動が続いて大きな会になり社会に認知されるようになってほしいとのお言葉をいただいた。続いて、横浜美術館の沼田さまより、ご自身は、展覧会とカタログの準備に日々追われているため、俯瞰的に色々な美術館の営みを見る機会がないが、そのような中で、CatalToの式は様々なカタログに触れられる良い機会であり、何よりも若い院生の人たちの視点からの意見を聴くことができ、現場の人間として刺激になり、励みになったとのお言葉をいただいた。
 このようにいただいたお言葉に、CatalToに関わる学生一同は大いに励ましていただいた。お忙しい中を遠方から受賞式にお越しくださった皆さまからは、興味深く貴重なお話に加え、私たちの活動についてもあたたかく優しいお言葉を賜った。この場を借りて改めて、深くお礼を申し上げたい。受賞式をとおして、活動に関わる学生や教員一人ひとりの、カタログそして展覧会についての見方や考え方が大きく変化した。我々にとってCatalTo2018の式典は、カタログや展覧会、そしてそれらをつくり上げる学芸員、デザイナー、作家の方々の存在がより身近なものとして感じられるようになった、かけがえのない経験であった。


(2020年2月18日 記念パーティー文責:中西麻依、金洲鉉)

About catalto

ブログ「掲示板」のカテゴリ「catalto」に投稿されたすべてのエントリーのアーカイブのページです。過去のものから新しいものへ順番に並んでいます。

次のカテゴリはactionです。

他にも多くのエントリーがあります。メインページアーカイブページも見てください。