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2018年9月 アーカイブ

2018年9月22日

CatalTo2017開催〔1〕

日時:2018年6月1日(金)14:00~18:00
場所:駒場博物館2階自然科学博物館展示室
出席者:CatalTo(展覧会図録品評勝手連TOKYO)メンバー計19名
メンバー=教員4名(学内)、大学院生およびOBOG 15名(学内外)
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活動報告:2018年6月1日(金)、昨年に引き続き、第二回CatalTo 2017が開催されました。今回は、東京およびその近郊の美術館・博物館等で2017年度に開催中もしくは会期がスタートした企画展、巡回中もしくは巡回が始まった企画展の展覧会カタログ、計150点以上を選考対象としました。
今回は、美術の分野にとどまらず、文学の分野のカタログも受賞しています。また、昨年度より注目していた、東京五輪に伴う「オリンピック文化プログラム」に指定されているカタログにも賞に該当するものがありました。
CatalTo 2017の選考結果および受賞カタログ・ポスターに対する選評は以下の通りです。

・CatalTo学術賞
(論文・翻刻・参考文献などが充実し、研究の出発点となる学術的価値の高さを賞します)
『狩谷棭斎墓碑受贈記念 狩谷棭斎――学業とその人』(早稲田大学会津八一記念博物館、2017年11月28日~2018年1月20日)
(選評)
「学術研究をリードする一冊  近世考証学者の墓碑から拓かれる領野」
近世後期、古碑や古典の考証において名を成した狩谷棭斎は、与謝野鉄幹らによって全集が編まれるなど、近代の古典受容にもつながる重要な人物ですが、盛んに研究されてきたわけではありません。墓碑の寄贈を機に制作された本カタログは、棭斎及び関連人物に関する複数の学術論文と、充実した参考文献一覧を収めるだけでなく、拓本や書物など文字資料中心の図版を、文字を読むのに適切な大きさ、かつカラーで掲載した上で、それぞれに釈文をつけており、研究上の使用に耐えるものとなっています。多方面に展開しうる棭斎研究の出発点となることが期待される、学術研究をリードする一冊です。

・CatalTo文学展賞
(企画の目の付け所を初め、初翻刻資料や文献一覧など、最先端の文学研究の成果が掲載されている点を賞します)
『明治文壇観測――鷗外と慶応3年生まれの文人たち』(文京区立森鷗外記念館、2017年 10月 7日 ~ 2018年 1月 8日)
(選評)
「カタログにして、今後の鷗外研究必携の書」
文芸雑誌『めさまし草』における鷗外と文人たちとの交流という、これまでの鷗外研究では閑却されていた着眼点に基づく、オリジナリティあふれる展覧会カタログです。初めて翻刻された資料や、文学界の動きおよび鷗外と文人たちの動きがわかりやすく整理された「明治文壇観測的年表」、『めさまし草』誌上で批評された作品の書誌情報がまとめられた「「めさまし草」収録 批評作品一覧」も収録され、カタログでありながら鷗外研究の最先端ともいうべき一冊となっています。

・CatalTo手のぬくもり・こだわり賞
(カタログが充実している点は勿論、手漉きの紙で作られたポスターからも温かみが伝わってくる点を賞します)
『世界を変える美しい本 インド・タラブックスの挑戦』(板橋区立美術館、2017年11月25日〜2018年1月8日。2018年4月21日~2018年6月3日、 刈谷市美術館に巡回)
(選評)
「出版のフロンティアはこんなにも美しい。」
南インドの小さな出版社、タラブックス。手漉きの紙に手刷りし、針と糸で綴じる工芸品のような絵本で知られますが、他にもインド社会の多様性を表現する多彩な出版物を手掛けています。少数民族や女性の技能を掬い上げ、話し合いを重ねながら本をつくり、正当な対価を支払うことで、よりよい世界を目指すタラブックスの挑戦。カタログに掲載された写真からは、工房での作業風景や街の様子も垣間見られます。絵本を持つ「手」は、職人の手仕事、そしてページをめくる私たちの手つきを連想させます。世界に働きかける本の力を感じてみてください。

(〔2〕につづく)
(2018年9月22日  文責:石川真奈実)

CatalTo2017開催〔2〕

日時:2018年6月1日(金)14:00~18:00
場所:駒場博物館2階自然科学博物館展示室
出席者:CatalTo(展覧会図録品評勝手連TOKYO)メンバー計19名
メンバー=教員4名(学内)、大学院生およびOBOG 15名(学内外)

活動報告:(〔1〕のつづき)

・CatalToオリンピック文化プログラム賞
(日本のメダル彫刻を扱い、オリンピックを機にあまり注目されてこなかった日本文化の一側面に光を当てた点を賞します)
『特別企画 メダルの魅力』(小平市平櫛田中彫刻美術館、2017年9月13日~2017年11月12日)
(選評)
「ど真ん中の企画力! 日本彫刻界の知られざる側面に迫る」
2020年のオリンピックに向けて、美術館博物館でも文化プログラムが展開されることが期待されていますが、2018年現在では残念なことにまだ、さほどの成果が上がっていないように思われます。しかし平櫛田中彫刻美術館は、このプロジェクトに正真正銘の企画力で向き合っています。本展では個人コレクターの所蔵品を中心に、明治から昭和期にわたるスポーツ、コンテスト、戦争やその他の目的で鋳造されたメダルを150点も紹介されています。カタログはわずか十数頁のリーフレット形式ですが、図版印刷が鮮明で、よくその魅力を伝えてくれており楽しく鑑賞できます。メダル彫刻は西洋では15世紀までも遡る深い歴史と芸術性をもったジャンルですが、日本ではなかなか認知されてきませんでした。その最初期にメダル彫刻の価値に気づき、畑正吉や水谷鉄也などの制作家を育てた美術史家・岩村透原案の《賞美章》(cat.no.124)が出品されたことも驚異的です!

・CatalToクロスジャンル賞
(歴史・生活・芸術と様々な角度から自転車に迫り、子どもから大人まで楽しめるカタログになっている点を賞します)
『自転車の世紀展(THE CENTURY OF BICYCLE)』(郡山市立美術館、2017年7月22日~2017年9月24日。2017年4月9日~2017年6月4日、 茅ヶ崎市美術館、2017年10月28日~2017年12月17日、 佐倉市立美術館に巡回)
(選評)
「自転車に導かれてクロスジャンルの世界へ!!」
「自転車」という誰にとっても身近な乗り物を基軸として、美術、漫画、写真、生活文化、テクノロジー、環境問題へと、様々なジャンルに読者を誘ってくれる一冊です。先に示した一つ一つのジャンルと自転車の繋がりを丁寧に紹介していく内容構成、大人から子供まで楽しむことができるレイアウトと文章、そして巻末に収録された自転車の歴史など、このカタログが持つ魅力が読者の好奇心を刺激してくれます。これから先、自転車という文化がさらに多様なジャンルを巻き込みながら発展していくことを予感させるカタログとなっています。

・CatalTo一般にオススメで賞
(おもちゃの魅力が最大限伝わるようにレイアウトが工夫され、誰が手に取っても夢中になれる点を賞します)
『ヨーロッパの木の玩具(おもちゃ)――ドイツ・スイス、北欧を中心に』(目黒区美術館、2017年7月8日〜2017年9月3日)
(選評)
「まるでおもちゃ箱をひっくり返したような! 「遊び」心にあふれた1冊」
カタログを開いてみて下さい。色とりどりの木製玩具が見開きいっぱいに目に飛び込んできます。紙上に鮮やかに印刷された玩具は、時には頁や枠をはみ出し、静止画像であっても目の前で玩具を触っているような感覚を見る者に与えます。自由で魅力的なレイアウトでありながら、ドイツ・エルツ地方の主要工房や制作技法、玩具の歴史やそれぞれの玩具の特徴まで、様々な角度からの厚みのある解説も兼ね備えた本カタログは、手に取りやすい薄さで、幅広い世代に向けて、ヨーロッパの木の玩具の魅力と豊かな世界を余すところなく伝えてくれます。

(〔3〕につづく)
(2018年9月22日  文責:石川真奈実)

CatalTo2017開催〔3〕

日時:2018年6月1日(金)14:00~18:00
場所:駒場博物館2階自然科学博物館展示室
出席者:CatalTo(展覧会図録品評勝手連TOKYO)メンバー計19名
メンバー=教員4名(学内)、大学院生およびOBOG 15名(学内外)

活動報告:(〔2〕のつづき)

・CatalTo国際交流賞
(密な国際協力のもと、シルクロードの文化財を復元した点を賞します)
『シルクロード特別企画展 素心伝心 クローン文化財失われた刻の再生』(東京藝術大学大学美術館、2017年9月23日~2017年10月26日)
(選評)
「伝承される赤子の心 ―超絶レベルの復元技術が蘇らせたシルクロード」
シルクロードという、危機に晒されている国の境界を越えた人類文明の重宝を復元するにあたっては、緻密な考証研究に、高度な三次元測量と科学分析の技術を加えた長時間の作業、膨大な仕事が行われました。その成果としての展覧会は、視覚のみならず、聴覚と嗅覚における愉悦をも齎します。これはもはや文化財のクローンというにとどまらず、現代人類の新たな作品であり、シルクロードの新しいあり方でもあるでしょう。さらに、復元作品の一部は故国に「帰還」する予定なので、国際の文化交流にとっても大きな貢献となります。プロジェクトに尽力した関係者の方々の「素心」に感心してやみません。

・CatalToデザイン賞
(優れたデザイン性によって、本物の玉手箱を開く愉しみを味わえるカタログである点を賞します)
『六本木開館10周年記念展 国宝《浮線綾螺鈿蒔絵手箱》修理後初公開 神の宝の玉手箱』(サントリー美術館、2017年5月31日~2017年7月17日)
(選評)
「読んで、観て、触れて。カタログで味わう美しい手箱の悦び」
《浮線綾螺鈿蒔絵手箱》の文様が全面に施されたカタログの装幀に、大変魅了されました。装幀の紙に美しい光沢と独特の肌触りがあり、折に触れて手に取りたくなるような魅力があります。さらに表紙を左右に開いてから本文を読むという仕様はきわめて個性的でありながら、手箱の蓋を取る動作を想起させます。言うまでもありませんが、収録された作品画像と充実した解説の水準もきわめて高いといえるでしょう。手箱に触れる悦びや愉しみが、カタログを手に取る悦びに重ね合わされて再現されており、「見事」の一言に尽きます。読んで、観て、触れて、美しい蒔絵手箱の世界を堪能することができる一冊です。

・CatalToカタログを持って、出かけま賞 with 漱石
(コンパクトサイズのカタログに、詳細な地図が掲載され、思わず読者を文学散歩へといざなう点を賞します)
『漱石からの手紙 漱石への手紙』(鎌倉文学館、2017年4月22日~2017年7月9日)
(選評)
「漱石のこころを読み取れる、手紙という名の鍵。」
「手紙」というテーマを軸に、夏目漱石の人となりやその人脈が分かるカタログです。可愛い見た目に反して、内容は意外にもリューミー。手紙の図版の下には、重要な部分の内容が分かりやすいよう丁寧に入力し直してくれているのも嬉しいです。巻末に鎌倉周辺の漱石ゆかりの地を示した地図が載っていて、カタログ自体も持ち出しやすいサイズ感なので、鎌倉を訪れた際はカバンに入れて散歩をするのもいいでしょう。

(〔4〕につづく)
(2018年9月22日  文責:石川真奈実)

CatalTo2017開催〔4〕

日時:2018年6月1日(金)14:00~18:00
場所:駒場博物館2階自然科学博物館展示室
出席者:CatalTo(展覧会図録品評勝手連TOKYO)メンバー計19名
メンバー=教員4名(学内)、大学院生およびOBOG 15名(学内外)

活動報告:(〔3〕のつづき)

以下の18点の展覧会カタログは受賞には至りませんでしたが、メンバーから受賞候補として挙げられました(順不同)。

・『鷗外の「庭」に咲く草花』(文京区立森鷗外記念館、2017年4月8日~2017年7月2日)
(寸評)
作品に登場する草花と、鷗外自邸の植物。同年生まれの鷗外と富太郎。これらを結びつけたテーマの妙と、花の写真に惹かれる一冊。

・『横尾忠則全版画』(町田市立国際版画美術館、2017年4月22日~2017年6月18日。2017年9月9日~2017年12月14日、横尾忠則現代美術館に巡回)
(寸評)
横尾忠則本人にみられるある「強烈さ」が、カタログそのものに置き換えられているような印象を受ける。

・『芦原義信 建築アーカイブ展』(武蔵野美術大学美術館、2017年5月22日~2017年8月13日)
(寸評)
芦原義信の建築をめぐり、写真、設計図、データ、文章などの多様な媒体によって構築されたアーカイブを、一冊の本としてアーカイブする新しい展覧会カタログ。

・『タイ:仏の国の輝き』(東京国立博物館、2017年7月4日~2017年8月27日。2017年4月11日~2017年6月4日、九州国立博物館にて開催)
(寸評)
タイ王国の仏教文化に内在する特徴を体系的かつ網羅的に視覚化した秀作。 特にカタログに掲載された仏像写真の多くは、東大寺の撮影で知られている三好和義によるものであるが、 普段日本の仏像写真を撮っていた作家の個性が、タイの仏像と遭遇した際にどのように現われるのかが確認できるのも、 このカタログの見どころの一つ。

・『藝「大」コレクション:パンドラの箱が開いた!』(東京藝術大学大学美術館、2017年7月11日~2017年9月10日)
(寸評)
東京藝術大学の重厚かつ多彩なコレクションを8つの視点から提示。これからのコレクション展の可能性を考える上での一つの解を示す。

・『美人画名品選:春信・歌麿から芳年・周延まで』(足立区立郷土博物館、2017年7月22日~2017年9月18日)
(寸評)
鈴木春信から楊洲周延まで、江戸明治の錦絵美人画を贅沢に結集。薄いながらも要を得た情報を盛込み、美人画の精髄を手軽に味わえる。

・『超絶記録!西山夘三のすまい採集帖』(LIXIL GALLERY、GALLERY1(東京)2017年9月7日~2017年11月25日。2017年6月9日~2017年8月22日、GALLERY OSAKAにて展示)
(寸評)
戦後日本の様々な庶民住宅と暮す者の息吹が残る生活空間のスケッチが満載。建築学者西山夘三の魅力が存分に凝縮された一冊。

・『シャガール:三次元の世界』(東京ステーションギャラリー、2017年9月16日~2017年12月3日)
(寸評)
シャガールの色彩豊かなイメージを覆す真っ白な表紙。知られざる立体作品の愛に満ちた世界へと誘われる。

・『漱石と子規:松山と東京友情の足跡』(新宿歴史博物館、2017年9月24日~2017年11月19日)
(寸評)
漱石と子規との交流に着目し、両者に縁ある松山市とも連携して開催された展覧会でした。「交友年譜」は、巻末の地図とも対応しており、ふたりの交流が読者の目に浮かぶようです。

(〔5〕につづく)
(2018年9月22日 文責:石川真奈実)

CatalTo2017開催〔5〕

日時:2018年6月1日(金)14:00~18:00
場所:駒場博物館2階自然科学博物館展示室
出席者:CatalTo(展覧会図録品評勝手連TOKYO)メンバー計19名
メンバー=教員4名(学内)、大学院生およびOBOG 15名(学内外)

活動報告:(〔4〕のつづき)


・『澁澤龍彦:ドラコニアの地平』(世田谷文学館、2017年10月7日~2017年12月17日)
(寸評)
没後30年を迎えた澁澤の魅力を「語る」一冊。豪華ゲストのエッセイや対談に加え、愛蔵の品々の静かな「語り」が心に迫る。

・『日本パステル畫事始め』(目黒区美術館、2017年10月14日~2017年11月26日)
(寸評)
日本における「パステル畫」の成り立ちを、パステルという画材の特質や製造工程まで具体的に例示した、資料的価値の高い展覧会カタログ。

・『タイポグラフィーの楽しさを探る』(武蔵野美術大学美術館、2017年10月16日~2017年11月11日)
(寸評)
タイポグラフィーの教育現場と、その多様な実践を一冊の書物で伝えるカタログ。理念と実践を兼ねた一冊が、タイポグラフィーのこれからの可能性を想像させてくれる。

・『明治の万国博覧会 新たな時代へ』(久米美術館、2017年10月21日~2017年12月3日)
(寸評)
第五回パリ万博(一九〇〇)、セントルイス万博(一九〇四)、第五回内国勧業博覧会(一九〇三)が見て分かる、読んで分かる一冊。ビジュアルとテクストのバランスが良く、リーダブル。

・『無垢と経験の写真』(東京都写真美術館、2017年12月3日~2018年1月28日)
(寸評)
すでに十四回目となる「日本の新進作家」展のカタログ。特段に目を引く構成ではないが、新進作家を着実に紹介して世に送り出してゆこうとする、同館の確かで篤実な姿勢をうかがわせて好感が持てる。扱われている内では最も若いが、片山真理の作品が秀逸と感じた。

・『徳川家光と若一王子縁起絵巻』(北区飛鳥山博物館、2018年3月17日~2018年5月6日)
(寸評)
家光の命で作られた絵巻(模本のみ現存)の全貌を紹介。横長の判型で綴じ代に写真が隠れず、連続する場面も見やすい設計。

・『フランス絵本の世界:鹿島茂コレクション』(東京都庭園美術館、2018年3月21日~2018年6月12日。2017年9月23日~2017年12月24日、群馬県県立舘林美術館にて開催)
(寸評)
まるで「絵本」のような可愛らしいカタログ。展示された絵本のクローズアップ写真がたくさん載っていて、「ここのこの装飾を見てほしい」「この絵に注目してほしい」というメッセージが伝わってきます。展覧会で見逃してしまったところを新たに発見できる面白いカタログになっていると思います。

(以下は、東京近郊での展覧会ではありませんが、ノミネートされたものです)
・『KYOTO GRAPHIE』(京都国際写真展、2017年4月15日~2017年5月14日。虎屋 京都ギャラリーをはじめ18ヶ所で同時に展示)
(寸評)
街なかに点在する各会場を舞台とした国際芸術祭の内容を凝縮したカタログ。良質な印刷により、その全体像を概観できる。

・『図録近代日本の道徳教育』(京都市学校歴史博物館、2017年12月16日~2018年4月15日)
(寸評)
歴代の教科書の見開き図版多数。「道徳」の前身である修身教育の歴史から、近代日本が目指した国家のあり方が見えてくる。

(2018年9月22日 文責:石川真奈実)

CatalTo2017 授賞式・パーティー開催〔1〕

日時:2018年7月27日(金)16:00-19:00
場所:東京大学教養学部駒場キャンパス 18号館4階コラボレーションルーム1およびオープンスペース
出席者:学内外関係者45名
活動報告:16:00〜18:00 CatalTo 2017授賞式
(於:東京大学教養学部駒場キャンパス18号館4階コラボレーションルーム1)
18:00~19:00  CatalTo 2017 記念パーティー(於:東京大学教養学部駒場キャンパス18号館4階オープンスペース)
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 CatalTo 2017授賞式では、受賞カタログの作成に携わられた担当学芸員の方々、デザイナーの方々をお招きし、展覧会開催およびカタログ作成にまつわる現場のお話を伺った。また、先日のCatalTo 2017にて、受賞カタログを推薦した教授・院生が中心となって、それぞれの受賞カタログの魅力的な点を、現場の方々に直接お伝えする時間も設けられた。日ごろは、知ることの叶わない生の声を聞かせていただける貴重なひと時であった。
以下は、開会の辞、それぞれの受賞カタログへのプレゼンテーションと、担当学芸員・デザイナーの方々のお話、閉会の辞をまとめたものである。(以下、敬称略とさせていただきます)

◎開会の辞(東京比較文學会編輯委員 CatalTo担当・今橋映子)
 東大比較文学会の機関誌である『比較文學研究』に、展覧会カタログ評が掲載されるようになって20年近くが経つ。現在は東京近郊の展覧会を、研究分野に近い博士課程の院生が執筆することが多いが、その展覧会と執筆者選定のための組織として、院生委員会が存在する。その院生員会の10周年記念の際、CatalPa(パリ周辺の展覧会カタログを勝手に表彰する活動)が話題に上り、それの東京版・CatalToの開催へと話は進んでいった。
 一昨年に試行され、昨年、晴れて第1回CatalToが開催された。今年は第2回となる。観客のひとりひとりとして、研究の興味関心に基づいて、カタログを選定した。選定対象となったカタログは、駒場美術博物館展覧会資料室に蒐集されているものを主としている。駒場美術博物館展覧会資料室には、分野を跨ぐような、他の分野と手を結ぶことで新しい視界を拓くような、専門性の高いカタログが、(蒐集できる数にかぎりはあるものの)集められている。この授賞プロジェクトが勝手連の精神で自由に運営されながらも、社会と大学を結ぶ一つの機縁となることを祈っている。

◎CatalTo学術賞(早稲田大学會津八一記念博物館)
『狩谷掖斎墓碑受贈記念 狩谷掖斎――学業とその人』
・プレゼンターから
 東日本大震災によって、狩谷掖斎の墓碑が破損し修理する必要が生まれたことをきっかけとする展覧会である。本カタログを推薦する理由は、主に以下の二点である。一つ目は、学術研究をリードするようなカタログである点を挙げたい。あまり研究されてこなかった狩谷掖斎という人物を取り上げ、「考証家」狩谷掖斎の業績を辿りながら、周辺の人物への目配りを行った、多角的な広がりを持つ展覧会であったといえよう。二点目は、資料的な価値の高さである。資料がカラー刷りであるところ、漢文には訓読文が付記されているところなど、資料として見る際に便利である。

・受賞者から(早稲田大学會津八一記念博物館・徳泉さち)
 東日本大震災によって、破損した墓碑の破片を拾うところから、作業は始まった。大きな墓碑であったため、修復場に持っていくところから苦労があった。ミルフィーユ状になった石が捲れ上がってくるのを押さえるのも困難であった。3年の歳月を要し、修復を終え、博物館に運び込んだ。
早稲田大学會津八一記念館博物館の強みは、大学のなかにある博物館であるところにある。狩谷掖斎は様々な方面で活躍した人物であったが、展示ではその多方面での活躍をすべて見せ尽くすことができなかった。その活躍をあますところなく伝えるため、図録には大学の様々な先生へ原稿依頼をするなど協力を仰ぎ、厚みのあるカタログを作成することができた。

(〔2〕につづく)
(2018年9月22日 文責:石川真奈実)
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CatalTo2017 授賞式・パーティー開催〔2〕

日時:2018年7月27日(金)16:00-19:00
場所:東京大学教養学部駒場キャンパス 18号館4階コラボレーションルーム1およびオープンスペース
出席者:学内外関係者45名
活動報告:(〔1〕のつづき)

◎CatalTo文学展賞(文京区立森鷗外記念館)
『特別展 明治文壇観測――鷗外と慶応3年生まれの文人たち』
・プレゼンターから
 これまでの鷗外研究とは異なった、人的交流という観点からの森鷗外に関する展覧会であった点に特色があったといえよう。『めさまし草』において批評された作品の初出がどの雑誌であったかをまとめた表や、初めて翻刻された資料などがとても充実している。本カタログは、既存の鷗外研究書には載っていなかった情報も多く収録され、カタログという枠を超え、研究書と呼ぶべき価値があると思う。

・受賞者から(文京区立森鷗外記念館・塚田瑞穂)
 この展覧会は、鷗外記念館の5周年を記念するものであった。鷗外記念館は、「森鷗外」という個人名を冠した文学館であるため、展示内容について「どうせ鷗外のものだ」という印象や、「一度行けばそれでいい」という思いを来館者に抱かれてしまう懼れがある。そのような思いを拭い去るため、特別展とコレクション展を年2回行い、いつ来ても「楽しい」、「変っている」文学館を目指している。
 また、昨年は正岡子規・夏目漱石の生誕150周年であったため、それにちなみ、「慶応3年生まれ」の人物に着目し、『めさまし草』を一つの柱に据えた。この展覧会では、過去のある一点に焦点を当てるというよりは、さらに昔から現代まで繋がる時間を表現したいという思いがあった。そのため、デザイナーの方との相談のなかで、カタログのデザインには「渦」を採用し、カタログにおさめられた年表も何段階かの帯状にすることによって時間の流れを表現した。(当初は蛇腹の年表を作る予定であった)袖にかかるほど多くの情報を詰め込んだカタログである。

◎CatalTo手のぬくもり・こだわり賞(板橋区立美術館)
『世界を変える美しい本 インド・タラブックスの挑戦』
・プレゼンターから
 タラブックス出版社は、手工芸品のように美しい本を作ることで有名なインドの出版社あるが、それ以外にも、少数民族のアーティストによるワークショップを行い、彼らに著作権の概念を教え、正当な報酬を得られるようにするなどの社会的な貢献も行っている。
 このカタログはスリーブに入っているが、スリーブから取り出すとカラフルな世界が顔を出す。カタログの中身は、写真、タラブックスの作品リスト、創業者のインタビューなど盛りだくさんである。

・受賞者から(板橋区立美術館・松岡希代子)
 タラブックスの展覧会を行った時期は、本来、板橋区立美術館は改修のため、閉館しているはずであった。しかし、改修の時期が延び、急遽開催することになった展覧会であった。なぜ、そんなに急にタラブックスの展覧会を開催することができたかといえば、その秘密は板橋区立美術館が開館3年目から続けてきた絵本の原画展(今年で38回目を迎える)にある。絵本の原画展は、展覧会のメインストリームではないが、板橋区立美術館も「末端」の美術館であり、その「末端」であるがゆえの「すみっこ力」を活かした展覧会であるといえ、そのなかで世界中のイラストレーターや出版社と密な関係を丁寧に築きあげてきたからであった。2013年には、タラブックスの中心人物であるギータ・ウォルフさんを招聘し、イラストレーター向けのワークショップを開いたこともあった。
 そのため、タラブックスの展覧会を行いたいという企画を持ちかけたときも、話はスムーズに運んだ。タラブックスの出版物の3割程度は、木綿の古着を再利用した紙に、シルクスクリーンで刷った手作りものであり、タラブックスの代名詞のようなものであるため、この展覧会のポスターは、インドにてシルクスクリーンで刷ることに決まった。そのポスターの効果は絶大であり、一か月に18000人の来場者、3100冊の図録売り上げを記録した。


(〔3〕につづく)
(2018年9月22日 文責:石川真奈実)

CatalTo2017 授賞式・パーティー開催〔3〕

日時:2018年7月27日(金)16:00-19:00
場所:東京大学教養学部駒場キャンパス 18号館4階コラボレーションルーム1およびオープンスペース
出席者:学内外関係者45名
活動報告:(〔2〕のつづき)

◎CatalToオリンピック文化プログラム賞(小平市平櫛田中彫刻美術館)
『特別企画 メダルの魅力』
・プレゼンターから
 2020年の東京五輪に向け、政府および東京都のレベルで、オリンピックに関わる文化プログラムを展開することになっている。その文化プログラムに参加している展覧会を昨年から探していた。そのなかで見つけたのが、薄いにも拘わらず充実した本展覧会カタログであった。
 この展覧会は、近代から現代にいたるまでの日本のメダル彫刻を150点ほど集めたものである。オリンピック文化プログラムのなかで、「メダル」という「ど真ん中」を取り上げた企画力の高い展覧会となっている。岩村透の作らせた日本近代では最初の方と思われる賞のメダルが含まれており、水準の高いものであったことが窺われる。

・受賞者から(小平市平櫛田中彫刻美術館・藤井明)
 平成26年に藤井浩祐という彫刻家の展覧会を行ったことがあるが、藤井浩祐はメダル・筆皿・文鎮など多種多様な作品を残している人物であった。展示品を借りに行った際に、藤井浩祐以外のメダルも見せてもらえた。日本では、昭和初期にスポーツが盛んとなった結果、近代の彫刻家の手でメダルが作られるようになった。メダル独特の光沢、手にのせた感触、丸・四角というメダルの形のなかで工夫を凝らしたデザインなどの、立体彫刻とは別のメダルの魅力を感じ、いつかメダルの展覧会を行いたいという思いが芽生えた。
 メダル蒐集家の協力も得て、今回の展覧会開催に漕ぎつけた。しかし、小平市平櫛田中彫刻美術館は2年に1度特別展を行うことになっており、2017年は谷間の年で、あまり予算をかけることができなかった。そのため、カタログのメダルの写真など、撮影はすべて自ら行った。
 また、メダルとはもともと受賞者がいるものである。受賞者は、メダルの作家やデザインにはあまり目を向けない。それがいったん美術コレクターの手に渡ると、メダルの作られた契機よりも、作家やデザインを重視するようになる。持ち主によって価値が変化するという意味では、メダルには宗教芸術と似たような機能があるようにも思われる。

◎CatalToクロスジャンル賞(自転車の世紀展事務局)
『自転車の世紀展(THE CENTURY OF BICYCLE)』(郡山市立美術館/茅ヶ崎市美術館/佐倉市立美術館)
・プレゼンターから
 誰にとっても身近な自転車を機軸に、美術・写真・漫画・生活文化・テクノロジーといった様々なジャンルへと見る者を誘う、自転車の文化の奥深さを紹介した展覧会であった。この展覧会カタログを推薦した理由は以下の三点に集約できる。一つ目は、様々なジャンルと自転車の関わりが丁寧に述べられている点である。二つ目は、大人から子供まで楽しめるレイアウトや文章である点が挙げられる。三つ目は、巻末にまとめられた自転車の歴史が充実している点である。様々なジャンルに跨ったカタログであるため、読者がもともと持っていた興味関心から、さらに新たなジャンルへと誘っていく魅力がある。

・受賞者から(郡山市立美術館・佐藤秀彦)
 昨年は、自転車が発明されてから200周年という記念すべき年であり、三箇所の美術館で協力し、展覧会を行った。展覧会は、①自転車の歴史、②描かれた自転車(19世紀の鮮やかなポスター、明治時代の自転車など)、③現代の自転車ファッション、④自転車の未来(最新の電動アシスト付き自転車やスバルがモーターショーに出したコンセプトバイクなど)という四つのパートから成っていた。
 この展覧会カタログは、小中学生でも買える価格設定にするため、むだのないB5変形のサイズを採用するなどし、1000円での販売を実現した。各章のアイコンを自転車のデザインにし、右上の角をめくっていくと自転車が動くぱらぱら漫画になっている遊び心もある。また、来場者と自転車を結び付けるため、地元の自転車工場の見学会や、変わった自転車の試乗会、自転車で市内を巡る催しなども開催した。
 自転車は、シンプルかつミニマムなデザインであるが、人が跨ってペダルを漕がなければ完成しない。だからこそ、これからも発展の可能性がある乗り物であり、21世紀は自転車リバイバルする「自転車の世紀」になるかもしれない。

(〔4〕につづく)
(2018年9月22日 文責:石川真奈実)

CatalTo2017 授賞式・パーティー開催〔4〕

日時:2018年7月27日(金)16:00-19:00
場所:東京大学教養学部駒場キャンパス 18号館4階コラボレーションルーム1およびオープンスペース
出席者:学内外関係者45名
活動報告:(〔3〕のつづき)

◎CatalTo一般にオススメで賞(目黒区立美術館)
『ヨーロッパの木の玩具(おもちゃ)展――ドイツ・スイス、北欧を中心に』
・プレゼンターから
 第一に、可愛らしく色鮮やかな木の玩具の表紙が魅力的である。手に取って開いてみれば、自由なレイアウトでのびのびと、玩具の写真が掲載されている。それも、ただ玩具の写真があるというのではなく、どうやってその玩具を動かすのかが解るように工夫されていて、カタログのうえで自分が玩具で遊んでいるような気持になれる。もちろん、玩具の主要工房・年譜・地図・論文も掲載されており、情報量も多く、簡潔ながら要点を押さえたカタログである。目黒区美術館は昨年も総合賞を受賞しており、昨年に引き続き、とても素晴らしいカタログを作成されたと思う。
 可愛らしい表紙のこのカタログは、幅広い人々に訴えかけ、「カタログを手に取ること」への入り口となるものであるといえよう。

・受賞者から(目黒区立美術館・加藤絵美)
 昨年は、目黒区美術館の開館30周年であった。また、この展覧会は、アトリエ・ニキティキ(玩具の会社)の協力のもと行われた3回目の展覧会である。(ニキティキさんとは、スイスのネフ社で作られているリボン型の積み木(ネフスピールなどを中心とする)の遊び企画を毎年行ってきたという繋がりがある)
この展覧会は、現代の木の玩具の多様性を切り口とした。展覧会には、積み木やパズルといった遊び方を紹介する章もあった。また、ヨーロッパで木の玩具が盛んに作られるようになった背景として、幼児教育の祖・フレーベルの提唱した知育玩具「恩物」にも触れた。日本で初めて幼稚園を開いた御茶の水女子大学からも作品を借りた。さらに、技術的な側面にも着目した。そこでは、ドイツのエルツ地方に伝わるライフェンドレーンなどを取り上げた。
(くるみ割り人形などが有名)エルツ地方を専門とする先生の協力も得た。展覧会では、実際にエルツ地方から職人を招き、ライフェンドレーンの機械も輸入し、実演を行った。
カタログに関しては、商品カタログにならないように注意した。たとえば、現代の玩具と古い時代の玩具を融合していることを示せるように工夫した。
◎CatalToデザイン賞(サントリー美術館)
『六本木開館10周年記念展 国宝《浮線綾螺鈿蒔絵手箱》 修理後初公開 神の宝の玉手箱』
・プレゼンターから
 まず、表紙特殊印刷された蒔絵手箱の光沢・質感に目を奪われた。手に取ってカタログを開いてみると、右、左と二段階に開くという特殊な装幀をしており、その開け方はまるで手箱の蓋を取る動作であるかのようだった。このカタログは、図版の質・解説が充実していることに加えて、カタログが掲載されている写真を眺める図録に止まらず、作品を身体的に味わう手立てにもなり得ることを証明していよう。

・受賞者から(サントリー美術館・佐々木康之)
 この展覧会は、六本木に移動してから10周年を記念したものであった。そこで、サントリー美術館の所蔵品のなかで唯一の国宝である「浮線綾螺鈿蒔絵手箱」を中心とした展覧会・カタログを作成しようとしたいと考えた。(ちょうど、浮線綾螺鈿蒔絵手箱を修理したタイミングでもあったため)
 七宝のなかでも手箱は豪華であり、その手箱のなかでも鎌倉期のものは豪華であり、その鎌倉期のなかでも「浮線綾螺鈿蒔絵手箱」は特別なものであるといえよう。展覧会名には、一般の人にもキャッチ―な「玉手箱」の語を用いた。
 日本人はそもそも箱が好きである。蓋があり中身が解らないことから、呪術にも用いられ、神への奉納品にもなり、もちろん普段の容れ物の役割も果たしてきた。
 カタログでは、玉手箱を開けることを身体的に体験してもらえるような工夫を凝らした。また、浮線綾螺鈿蒔絵手箱は沃懸地(いかけじ)という金の粉末を蒔き詰めた手法が用いられているため、その色を再現するのは苦労した。さらに、カタログを手箱に見立てたかったので、外側にはなるべく文字を入れないという工夫をした。

(〔5〕につづく)
(2018年9月22日 文責:石川真奈実)

CatalTo2017 授賞式・パーティー開催〔5〕

日時:2018年7月27日(金)16:00-19:00
場所:東京大学教養学部駒場キャンパス 18号館4階コラボレーションルーム1およびオープンスペース
出席者:学内外関係者45名
活動報告:(〔4〕のつづき)

◎CatalToカタログを持って、出かけま賞with漱石(鎌倉文学館)
『夏目漱石生誕150年特別展 漱石からの手紙 漱石への手紙』
・プレゼンターから
 可愛らしいデザインと手に取りやすいサイズ感に惹かれた。巻末には、鎌倉周辺の漱石ゆかりの地の地図が掲載され、そのまま周辺を散策することも可能である。内容ももちろん充実しており、文学研究者にとっては大事な一時資料となる手紙が、翻刻されているのは大変便利である。

・受賞者から(鎌倉文学館・小田島一弘)
 鎌倉文学館は観光地にあり、旧前田侯爵家の別邸を再利用しているため、年10万人ほど訪れる来館者のうち、7割程度は文学とは関係のない方である。そのため、予備知識なしに文学に親しんでもらえるような展示を心掛けている。
 手紙という題材は、作家の心を知ることのできるものであるため、一般の来館者にも親しみやすいテーマであるといえる。なかでも、漱石は筆まめであり、明治時代の人物のなかでは現代と同じような(読みやすい)手紙を書く人物である。
 鎌倉文学館は展示室が狭く、100点ほどの展示品を置くともういっぱいになってしまうので、テーマをしぼって展示を行う必要がある。そこで、テーマとして漱石の手紙が選ばれた。また、漱石研究が盛んに行われ、資料がよく保管されており、その半生を手紙で辿ることができる人物である点もテーマにふさわしかった。
 鎌倉文学館のカタログは5~6年前から、A5サイズ(横)を採用している。これは、観光の途中で文学館によったお客さんにも買ってもらえるように、女性のハンドバッグに収まるサイズを意識してのことだ。A5の横置きなのは、縦置きにするとさみしいスペースができてしまううえ、資料の見方の順番がわかりにくくなってしまうためである。
 また、このカタログで工夫した点は、ただ単に手紙を翻刻すだけではなく、手紙本体の文字と見較べて読むことができるように印をつけたとことである。また、手紙のなかで人物名が出てきたときは、簡単なプロフィールをつけ、文学に詳しくない人にも解りやすいように心を配った。

※CatalTo国際交流賞(東京藝術大学大学美術館)
『シルクロード特別企画展 素心伝心 クローン文化財 失われた刻の再生』
 文化財のクローンを作り、芸大美術館のなかで展開するという、学術と展覧がうまく融合した展覧会であった。そのうえ、日中両国の緊密な協力も窺うことができた。
 当日は、関係者の都合で授賞式はご欠席であったが、このカタログの価値を授賞式で
皆さんにご報告した。


◎閉会の辞(東大比較文學会会長・菅原克也)
 東京大学にはキャンパスがいくつかあるが、そのなかで駒場は「文理融合」「inter disciplinary(学際/専門を跨ぐ)」といった特徴を持っている。その駒場を拠点とする東大比較文学会から出す賞は、なにかしら「跨いだもの」であるべきだと考えるが、今回の受賞カタログを見てみると、多彩であり、文理融合しており(狩谷掖斎から自転車まで)、対象とする年齢層も幅広く、地域性にも富んでおり、大変駒場らしい賞であるといえる。また、学芸員やデザイナーの方々の話から、カタログを作るという行為もまた、様々な領域・専門・関心の人を巻き込んだものであることが実感できた。

 CatalTo 2017 記念パーティーには、学芸員・デザイナーの方々をはじめ、授賞式参加者の多くが出席した。入口付近のテーブルには、CatalTo 2017の受賞カタログのほか、惜しくも受賞を逃したノミネートカタログ、さらには昨年度のCatalTo 2016の受賞カタログも飾られた。彩り豊かなカタログを手に取りながら、話に花が咲く光景も見られた。部屋の奥には軽食と飲み物が用意されており、グラスを片手に、より身近な距離感で、学芸員・デザイナーの方々と交流が行われた。また今年度の本部長・松枝佳奈氏、院生委員会委員長・朴承民氏からの挨拶もあり、副委員長・李範根氏をはじめ、大奮闘のメンバーに皆でその労をねぎらった。
 最後に板橋区立美術館の松岡氏より、「飛び入り」のご挨拶を頂き、何よりもこの賞が若い院生たちの活動から生まれていることを、現場の人間として嬉しく思うとのお言葉があった。それはCatalTo本来の意義をご理解下さっているというメッセージとして、一同何より嬉しく伺ったのである。
こうして楽しい夏の夕べは、今年もまた盛況の裡に幕を閉じたのであった。
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(2018年9月22日 文責:石川真奈実)

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