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2017年12月 アーカイブ

2017年12月20日

[おすすめ]生誕100年 ユージン・スミス写真展

会場:東京都写真美術館
会期:2017年11月25日-2018年1月28日
評者:堀江秀史
寸評:ユージン・スミス展に行ってきました。
 アメリカの田舎で医師として地域社会に貢献する「カントリー・ドクター」(1948)、あるいは日本の高度経済成長の負の側面を追った「水俣」(1971-73)のイメージが私の中では強く、彼には「人道主義の写真家」という認識ばかりがあったのですが、ちょうどそれらの間の時期、ニューヨークのロフトで不安定な精神状態で生活を送っていた時に撮られた写真たちに、強く心惹かれました。降りしきる雪の向こうに建つ高層アパートと剥き出しの非常階段、恍惚の表情でドラムを激しく演奏するロニー・フリー、おそらくは小さなライブハウスの闇に浮かぶアルバート・アイラーの横顔。《アルバート・アイラー》からは、デザイナーの方達がよく唱える「余白の大切さ」(ポスターなどで文字や絵が入らない場所が効果を生むという考え方)が一目瞭然で感得できるとても洗練された作品です。
 展示は、写真そのものがやはりとても良いことに加えて、「カントリー・ドクター」のプリントと並べて、ライフ誌面も見ることができて行き届いていました。カタログの図版としては、会場で見たプリントの印象から落ちるものがあるのが残念です。例えば《アルバート・アイラー》は黒の余白がとても大事だと思いますが、細かな白い斑点が入ってしまっています。また、上述の《降雪の中のアパート》ですが、オリジナルプリントは「16.2×10.4cm」と小ぶりなところが、寒く縮こまった精神と重なって切なくさせられましたが、図版は他と比して大きく印刷され、そのあたりの感覚は感じられませんでした(欲張りですが、、、)。Rebecca A. Senf氏の論文や文献一覧の情報は充実していると思います。
 なお、カタログはISBN付で、『ユージン・スミス写真集』と銘打たれて販売されています。本展覧会の情報が一切載っていないのは、カタログであるよりも書籍として残す意図でしょうか。スミスの日本での受容史としてこの展覧会が記憶されるべきだとしたら、そうした情報がないのは記録としての価値を損なうものではないかなと思いました。せめてここに書かせて頂く理由の一つです。

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