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CatalTo 胎動会傍聴記(2)

日時:2016年3月16日
場所:駒場美術博物館セミナー室
出席者:
活動報告:
 引き続き、CatalTo胎動会の傍聴記を書いていきたいと思います。以下に載せるのは、当日特に人気のあった三つのカタログについてのコメントをまとめたものです。

1. 小林清親展
(静岡市美術館、2015年2月7日〜3月22日)
 何よりもまず、A5版横開きというサイズにこの図録の特徴が見られる。展覧会カタログとしてはかなり小さいサイズの本書であるが、それゆえに手に取りやすく、気軽に眺めることができる。また、通常の展覧会図録とは異なり、一般書として書店で購入できることも、本書をより身近なものにしているだろう。
 内容面でも、清親の代表作『東京名所図』など、横長の木版画を紙面いっぱいに掲載することで、この横長のフォーマットが大いに活かされている。また、第一章【光線画】(版画に適した光沢のあまりない紙)、第二章【風刺画・風俗画】(実際の新聞を思い起こさせるような少しざらざらした紙)、第三章【肉筆画・スケッチ】(光沢のある紙)と、章ごとに紙質を変え、さらに夜をテーマとした作品群の背景色は藍色にするなど、こだわりが随所に見られる。同一ページで「摺り」の比較ができるようにレイアウトされていたり、「猫と提灯」を例に35段階もの順序摺りが掲載されていたりと、サイズはコンパクトではあるが、細かな配慮が施され、中身も充実した図録と言えるだろう。
 もちろん、縦型の作品などはどうしても小さくなるし、同一作品を並べて掲載する際にも図版が小さくなってしまうという難点もあるが、これは利点と表裏一体のものであろう。大型の展覧会カタログが多い中で、他とは一線を画し、手元に置いて、気軽に楽しめる優れた図録と評価したい。(林久美子)

2. アルフレッド・シスレー展
(練馬区美術館、2015年9月20日〜11月15日)
 印象派を扱った展覧会は毎年数多く開催されており、ともすると展示内容だけでなく展覧会カタログも似通ったものになりがちであるが、本カタログは内容の充実度でそれらとは差別化を図っている。
 展覧会カタログの核となる「作品解説」には、出品作が制作された季節やその土地の特徴が詳しく記されており、画面隅々までの注意深い観察によって、一見すると同じような作品一点一点の個性が浮き彫りにされている。また、画家がよく描いた、セーヌ川とその支流について河川工学的な視点から書かれた論文(佐川美加)は、美術史研究とは異なるアプローチによりシスレー作品の新たな楽しみ方を提示している。フランスにおけるシスレー評価の経緯(小泉順也)と日本におけるシスレー受容(小野寛子)に関する論文に加え、年譜、参考文献一覧、国内外の展覧会歴、国内所蔵のシスレー作品リストなどは資料的価値が高く、本カタログは今後の印象派研究にとって欠かせない一冊となったに違いない。(井口俊)

3. Who Dance? 振り付けのアクチュアリティ展
(早稲田大学演劇博物館、2015年10月1日〜2016年1月31日)
 「舞台芸術」の「今」を展示するのにどのような方法があり得るのか、を考えさせられた展覧会。カタログの方は、あの展覧会の記録として機能しているか、はひとまず置いておいて、舞踊にまつわる(必ずしも「現代舞踊」限定ではない)良質な論考を多数集めた論文集として興味深く読める。執筆陣が自分の好きなものについて好きなことを書いている風でありながら、単なるファンレターにとどまっていないところに好感が持てる。(大西由紀)

 このように、カタログの内容に対するコメントだけではなく、カタログのつくりに注目したコメント、あるいは展覧会そのものの意義と関連づけたコメントもなされています。こうしたことからも、カタルト胎動会が非常に多様な観点から展覧会カタログを品評する会であったことがうかがえるでしょう。

 以上のように、カタルト胎動会は大いに盛り上がり、成功裡に終わりました。閉会後は近場の喫茶店でコーヒーやお酒を飲みつつ、第一回CatalTo開催に向けて関係者全員で協力して準備をすすめていこうと決意を新たにしました。今年7月には第一回CatalToを開催する予定なので、その様子をご報告できる日を今から心待ちにしております。

(2017年4月30日 文責:吉岡悠平)


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