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[寸評]ロマノフ王朝展(上)

会場:東洋文庫ミュージアム
会期:2017年1月7日(土)〜4月9日(日)
評者:松枝佳奈
寸評: ロシア革命から百年後の2017年、日本でこのような企画展が開催されたことは大変歓迎すべきことである。本展が東洋学の専門図書館・研究所である東洋文庫で行われ、展示品全70点のほぼ全てが同館の蔵書および所蔵品で構成されたことは、きわめて画期的なことであり、日露交渉史や日露文化交流史、欧米と日本におけるロシア研究史や欧米における日本学などの研究に対する東洋文庫の重要性を改めて提示したといえよう。

 1階のオリエントホールでは、企画展の趣旨に沿った東洋文庫の蔵書21点が一挙に展示されている。イェルマークのシベリア戦役について記述された英語文献に始まり、シベリアや極東の地理的・生物学的調査の結果がまとめられたロシア語文献や、桂川甫周『北槎聞略』の校訂本(1932年版)、19世紀末のシベリア・満洲・アムール州などの統計や情報を網羅したロシア語の地方便覧、榎本武揚『西伯利亜日記』などがあり、一口にロシア関係文献と言っても、言語や分野は実に多様である。
 本展の副題には「日本人の見たロシア、ロシア人の見た日本」とあるが、上述のオリエントホールの展示に象徴されるように、その内実はかなり複雑である。「ロシアから見た日本」のまなざす方角には、おのずからシベリアや極東が含まれており、「日本から見たロシア」というまなざしの起点は蝦夷地や極東、シベリアにあり、そこからサンクトペテルブルクなどのヨーロッパ側のロシアへと陸続きに伸びていく。そこに「西洋から見たロシア(とシベリア・極東)」という第三のまなざしが加わって、より錯綜したものとなっている。これが「日本人の見たロシア、ロシア人の見た日本」に大きく影響している点に、江戸後期以来の日本のロシア研究およびその理解の実態の捉えどころのなさや、日露両国の相互理解の困難さの一因があることを改めて痛感させられた。
 
 階段で2階に上がると、床から天井までを埋め尽くすかのような巨大なモリソン書庫が来館者を待ち受けている。その中に、帝政期のロシアで刊行された当時の最先端のファッションやロシア各地の諸民族について記述された絵入りの豪華装丁本が展示されている様は、圧巻の一言である。それらの展示の上や横に垣間見えるG.E.モリソンの極東・シベリア関係の蔵書も、背表紙のタイトルのみしか目にできないが、同時代の知識人のロシア認識の一端を示すものとして一見の価値があるだろう。((下)につづく)


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