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2017年3月 アーカイブ

2017年3月12日

[おすすめ]花森安治の仕事:デザインする手、編集長の眼

会場:世田谷美術館
会期:2017年2月11日(土)〜2017年4月9日(日)
評者:佐々木悠介
寸評: 『暮らしの手帖』を立ち上げ、長年編集長を務めた花森安治の展覧会に行ってきました。

 私なりにこの展覧会のポイントを列挙すると、まず、雑誌の編集という謂わば「メディア=媒体」を展覧会のテーマとして立てるということじたいが、極めて現代的で面白い試みであるということがあります。
 さらに、アーティスト=花森のデザイン・レイアウトを概観するという、テクスト&イマージュを研究対象とする者にとって興味をかき立てられる要素があります。
 そして、単に『暮らしの手帖』の花森にとどまることなく、戦時中の大政翼賛会での活動にまで踏み込んで取り上げているということが挙げられます。カタログでも「論稿」というよりは「記事」と呼ぶべき短いものではあるとしても、このテーマについてキュレイター寺本美奈子氏の文章が掲載されています。

 世田谷美術館らしい、新鮮で充実した展示であると思いますので、まだの方は是非御覧になることをおすすめします。
 カタログは2400円(ISBNのないもの)、紙質にも拘っていて、良質なものでした。


 展覧会を観た後に、書店で現在の『暮らしの手帖』を立ち読みしましたが、表紙のデザインを含めて、花森の時代と比べるとまったく次元が違う、かなりスケールダウンしたという印象でした。

2017年3月14日

2014年度活動報告(2014年10月~2015年10月)

メンバー:
西田桐子(委員長)
吉岡悠平、李範根(副委員長)
岡野宏、川野芽生、久保田悠介、高原智史、刀根直樹、永嶋宗、早川萌、古舘遼、山口詩織
伊藤由紀、林久美子、堀江秀史(相談役)


会議年月・活動報告:
◆新年度引き継ぎ会(2014年10月3日)
・役職の引き継ぎ 
・新委員の役職決め 
・CatalToに関する提案


◆第一回ミーティング(10月31日)
・引き継ぎ状況報告
・委員会の趣旨説明
・今後の活動に関して
・カタログ評執筆の候補者選定

カタログ評執筆の候補者の選定では、投票の結果、「赤瀬川原平の芸術原論 1960年代から現在まで」のカタログ評を古舘遼さんに執筆していただくことになりました。


◆第二回ミーティング(12月6日)
・各担当から業務に関する提案

院生専門調査では、卒業した方々の居住地や勤務先、研究室への所属状況、留学情報についても積極的に調査をしていくことになりました。
ブログ記事については、留学あるいは帰省中の学生に対して、当地の展覧会についての紹介記事の執筆をお願いしていくことになりました。


◆第一回見学会(12月6日)
第二回ミーティングと同日に、「赤瀬川原平の芸術原論 1960年代から現在まで」(千葉市美術館)を見学しました。その後、千葉駅にて懇親会を開催しました。


◆比較文学比較文化コース オリエンテーション(2015年4月1~2日)
1日目に、委員会の紹介を行いました。その後、懇親会にて新入生の勧誘を行いました。2日目に、新入生を対象に駒場キャンパスをまわるツアーを開催しました。


◆第三回ミーティング(4月2日)
・展覧会調査の説明
・業務の進捗状況の報告
・新入生の勧誘状況の報告


◆第二回見学会(4月4日)
「幻想絶佳:アール・デコと古典主義」(東京都庭園美術館)を見学しました。その後、目黒駅にて懇親会、夜桜の鑑賞会を開催しました。


◆展覧会調査期間(4月14日~28日)
調査した情報をもとに、5月22日に全国の展覧会情報をまとめたファイルを完成させました。


◆院生専門調査(5月15日~5月31日)
調査した情報をもとに、6月16日に比較文學比較文化研究室に所属する学生の専門分野をまとめたファイルを完成させました。


以上。[文責:吉岡]

2017年3月31日

[寸評]ロマノフ王朝展(上)

会場:東洋文庫ミュージアム
会期:2017年1月7日(土)〜4月9日(日)
評者:松枝佳奈
寸評: ロシア革命から百年後の2017年、日本でこのような企画展が開催されたことは大変歓迎すべきことである。本展が東洋学の専門図書館・研究所である東洋文庫で行われ、展示品全70点のほぼ全てが同館の蔵書および所蔵品で構成されたことは、きわめて画期的なことであり、日露交渉史や日露文化交流史、欧米と日本におけるロシア研究史や欧米における日本学などの研究に対する東洋文庫の重要性を改めて提示したといえよう。

 1階のオリエントホールでは、企画展の趣旨に沿った東洋文庫の蔵書21点が一挙に展示されている。イェルマークのシベリア戦役について記述された英語文献に始まり、シベリアや極東の地理的・生物学的調査の結果がまとめられたロシア語文献や、桂川甫周『北槎聞略』の校訂本(1932年版)、19世紀末のシベリア・満洲・アムール州などの統計や情報を網羅したロシア語の地方便覧、榎本武揚『西伯利亜日記』などがあり、一口にロシア関係文献と言っても、言語や分野は実に多様である。
 本展の副題には「日本人の見たロシア、ロシア人の見た日本」とあるが、上述のオリエントホールの展示に象徴されるように、その内実はかなり複雑である。「ロシアから見た日本」のまなざす方角には、おのずからシベリアや極東が含まれており、「日本から見たロシア」というまなざしの起点は蝦夷地や極東、シベリアにあり、そこからサンクトペテルブルクなどのヨーロッパ側のロシアへと陸続きに伸びていく。そこに「西洋から見たロシア(とシベリア・極東)」という第三のまなざしが加わって、より錯綜したものとなっている。これが「日本人の見たロシア、ロシア人の見た日本」に大きく影響している点に、江戸後期以来の日本のロシア研究およびその理解の実態の捉えどころのなさや、日露両国の相互理解の困難さの一因があることを改めて痛感させられた。
 
 階段で2階に上がると、床から天井までを埋め尽くすかのような巨大なモリソン書庫が来館者を待ち受けている。その中に、帝政期のロシアで刊行された当時の最先端のファッションやロシア各地の諸民族について記述された絵入りの豪華装丁本が展示されている様は、圧巻の一言である。それらの展示の上や横に垣間見えるG.E.モリソンの極東・シベリア関係の蔵書も、背表紙のタイトルのみしか目にできないが、同時代の知識人のロシア認識の一端を示すものとして一見の価値があるだろう。((下)につづく)

[寸評]ロマノフ王朝展(下)

会場:東洋文庫ミュージアム
会期:2017年1月7日(土)〜4月9日(日)
評者:松枝佳奈
寸評:((上)からのつづき) 
 2階の企画展示で視覚的に印象深かったのは、デジタルブックとなった「プチャーチン来航図」と「蝦夷島奇観」、そしてガラスケース展示の大槻玄沢『環海異聞』である。普段なかなか実見することのできない作品をデジタルパネル上で自在に拡大して観察し、実物によく近づいてじっくりと眺められることはこの上ない体験である。丁寧に色鮮やかに描かれたロシア人やアイヌの人々の図からは、当時の日本人のロシアや蝦夷地、そしてそこに生きる人々への好奇心と畏怖がうかがえる。
 研究資料としての価値を認識させられたのは、桂川甫周訳『魯西亜誌』(1793年)とキュネル著『ロマノフ朝ロシアと極東の関係』(1914年、ウラジオストク刊)であった。前者のパネル解説には、「日本のロシア研究のパイオニア」とあり、日本の蘭学者と彼らによる世界地理書の研究が近世以降のロシア研究や対露観に与えた影響の大きさを再認識すべきことを促す、一考に値する見解である。後者は帝政末期の極東ロシアでロシア人東洋学者が北東アジアを一体としてとらえる地域研究の先駆けとして紹介されており、当時のロシアの東洋学者が北東アジア史研究や地域研究にも着手していた点は大きな発見であった。

 展示パネルやキャプションにはユーモアあふれるイラストやキャッチコピーが用いられ、比較的平易な説明が心がけられている。また声優の上坂すみれさんが会場の音声ガイドを担当するなど、若年者や漫画やアニメなどのポップカルチャーのファンを意識した構成となっており、ロシアの歴史に初めて触れる来館者にも分かりやすく、予備知識なしでも展示を十分に楽しめる。
 その一方で、通常、専門家や研究者の利用が多い東洋文庫であるからこそ、展示や展示品リスト、販売されている企画展のブックレットには、研究資料や書誌としても利用できるように、より細やかな配慮があるとなお良いかと思われる。たとえば、展示品の文献のキャプションには、ロシア語や英語、フランス語、ドイツ語、オランダ語などでの原語表記が求められるだろう。これにより、ただちに蔵書の検索や閲覧ができ、東洋文庫のより積極的な活用にもつながるのではないか。また東洋文庫所蔵のロシア関係文献は他にいかなるものが存在するのか、その規模はどの程度のものであるかなど、詳細なデータや統計資料などがあるとさらに書誌としての価値は高まるに違いない。

 本展はおそらく企画展開催の予算等が限られているなか、貴重かつ充実した蔵書を存分に活用して、下記の点を提示したきわめて良質なものである。第一に、ヨーロッパや日本においてロシアを研究することは、きわめて地理学的・民族学的な営為であり、その方法論はおおむね18世紀以降の東洋学と軌を一にしていたといえるだろう。この点において本展が今回東洋文庫で開催されたことは必然的であると思われる。第二に、日露関係を考察する際、日露戦争やロシア革命、第二次世界大戦期など20世紀以降のみに焦点を当てるのではなく、ロマノフ王朝の歴史を縦糸として、16世紀から20世紀初頭までを通覧することの重要性が浮き彫りとなった。特に18世紀から19世紀、そして20世紀初頭まで一つのまとまった時系列として見ることで、日露関係における過去と現在の連続性を改めて強く意識させられるのである。
 本展をきっかけとして帝政ロシア時代の日露関係、18世紀以来の日本のロシア研究などへの関心が日本国内でさらに高まっていくことを期待したい。

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