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[おすすめ] 生誕100年 小山田二郎



・会期:2014年11月8日~2015年2月22日
・会場:府中市美術館
・評者:西田 桐子

のっけから私事で恐縮だが、小山田二郎(1914-91)は私にとって特別な画家である。
小山田の絵を初めて目にしたのは、2005年の東京ステーションギャラリーで開催された「異形の幻視力 小山田二郎展」であった。私としては珍しいことに、三度見に行った。それからほぼ十年ぶりであることに書いていて気づき、たいへん驚いているのだが、小山田との出会いは、精神の深いところからゆらりと現れたかのような異形の存在たちを、人混みにまぎれながら必死に見つめたという思い出として鮮明に残っている。

このたびは、11月下旬と1月の上旬の二度、府中市美術館で開催された「生誕100年 小山田二郎」を見に行った。草っぱらで子供がはしゃぎまわる公園の中にある美術館は人影もまばらで、心ゆくまでのんびりと絵を見て回ることができた。この展覧会は年末入れ替えの二部制となっていて、一月の来訪の折には三分の二以上が入れ替えられていたため、二部とも行くと170点近くの小山田作品が堪能できる。

今回は生誕100年展ということもあってだろう、戦前の作品や1950年代初頭の作品も見ることができた。2005年の際に見て、たいへん心に残った小山田の絶筆とされている作品がある。この「舞踏」(1991年)のモチーフが、1950年に既に、ほとんど形は同じままに描かれていて驚いたりもした。このたび、府中市で大規模な回顧展が開かれた理由としては、小山田が1960年から1971年に失踪するまでの一時期、府中市にアトリエを構えたということが挙げられる。展覧会でも、その時期の作品は「多磨霊園で生まれた幻想」と題してまとめて展示されていた。また、2005年の展覧会では「鳥女」や「時計」など威圧感すら漂う迫力ある油彩画の印象が強かったが、今回は色調も明るく、異形のものとはいえどことなく可愛げのある生物たちが描かれた水彩画が心に残った。中でも、「蛙の国」や「夏の虫」、「流星」(星のかわりに骸骨が降ってくる)など、テクスタイルにしてワンピースなどにしたら素敵だなと思うほどに、複雑で美しい色彩に心奪われた。こうした楽しくなるようなモチーフの水彩画によって、私の中の小山田イメージも少々変化したようである。

もう一つ、文学に関心のあるものにとっては、「太陽をくれ!イプセンの幽霊より」や「とりで――ポオ『黄金蟲』に於けるアナロジイ」など、戦前には西条八十主幹の文芸雑誌『蝋人形』に参加していた小山田の文学への造詣の深さを垣間見るのもまた一興である。さらに、特に、戦後日本文学に関心がある人にとっては、色川武大『生家へ』や倉橋由美子『倉橋由美子の怪奇掌篇』などの装丁原画も展示してあり、瀧口修造との深い関わりも含め、小山田と文学との関わり、もしくは戦後日本の文壇と画壇、さらに大きくみれば美術と文学との関わりについても思いを馳せることができよう。

最後に、展覧会カタログについてだが、最も嬉しかったのは、前回のカタログと比べても絵がかなり大きく載せられていたことである。ものによって見開きで一枚の絵を載せたり、一部をほぼ原寸大ではないかと思うほど拡大してくれたりと、小山田ファンにとっては何かと嬉しい工夫が施されていた。


私も次回はぜひ!と思っているのだが、鑑賞後には多磨霊園にお散歩に行きたくなることうけあいである。美術館自体、駅から少し距離があるので、是非とも時間に余裕をもって訪れていただきたい。


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