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2014年7月 アーカイブ

2014年7月29日

[寸評]「ボストン美術館 華麗なるジャポニスム展」

・会期:2014年6月28日(土)-9月15日(月・祝)
・会場:世田谷美術館
・評者:木許裕介

 夏の気配が立ちこめる7月13日(日)、展覧会カタログ評委員会の第三回見学会が行われました。訪れたのは緑溢れる砧公園の中に佇む世田谷美術館で開催中の「ボストン美術館 華麗なるジャポニスム展」です。個人的なことながら、先日海外で「三つのジャポニスム」という吹奏楽曲を指揮させて頂く機会があり、それ以来、この「ジャポニスム」という概念に、音楽でも美術でも、もっと実際の作品を通じて触れてみたい、と思い続けていました。
 展示は一階が「日本趣味」「女性」「シティ・ライフ」、二階が「自然」「風景」という合計五セクションによって構成されています。そして、それぞれのセクションにおいて、浮世絵など日本の作品と印象派を中心とした西洋絵画を併置するという展示方法を用いることによって、構図や主題の影響関係が明確になるよう工夫されていました。遠近法でも筆触分割でもない、西洋絵画とは全く違うコンポジションの原理に出会った芸術家たちの衝撃と反応が浮き彫りにされていたように思います。いささか分量が多すぎてジャポネズリーおよびジャポニスムという用語の定義がやや曖昧に感じられたことも事実ですが、絵画、版画、素描、写真、工芸など合わせて148点という展示作品数が示すように、非常に充実した内容の展覧会だったと言えるでしょう。
 しかし何と言っても、本展覧会の目玉であったクロード・モネの《ラ・ジャポネーズ》は圧巻でありました。おそらくこの壁の向こうの空間に「彼女」がいるだろう、という期待を抱かせる配置も巧みでしたし、事実、ボストン美術館にて精密な修復作業を施された《ラ・ジャポネーズ》は物凄い存在感を放っていて、その色彩の鮮やかさには吸い寄せられるような錯覚すら憶えました。カタログや写真で見ていたものとは比べものにならないほど、それはキャンバスの中から飛び出してくるような立体感を持っているのです。同時に、周囲に散らされた団扇や扇子の襞と身体を捻ったその構図が呼応しあって、どこまでも旋回していくのではないか、というある種の運動性を想起させるものでもありました。そして《ラ・ジャポネーズ》を巡っては、映像資料の上映によって、「修復」という営為の奥深さや、X線や赤外線反射、紫外線を用いた分析から明らかになった作品成立までの経緯も窺い知ることができます。それは推理小説を読むような面白さに満ちていて、作品そのものを鑑賞する楽しみを何倍にも広げてくれるものでした。一通り展示を見た後もこの一枚がどうしても忘れられず、また戻ってきてはぼんやりと見つめる、というように、見学会の大部分の時間を《ラ・ジャポネーズ》に当てることになりました。
 「ボストン美術館 華麗なるジャポニスム展」の会期は2014年6月28日(土)-9月15日(月・祝)となっていますので、夏の陽射しが強いうちは《ラ・ジャポネーズ》をはじめ日本と西洋の「出会い」を楽しむことが出来ます。是非、お時間をたっぷりと取って頂いてご覧頂ければと思います。

ボストン美術館.jpg

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