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[寸評]今日もコロッケ、明日もコロッケ―益田太郎冠者喜劇の大正



・会期:2014年3月1日(土)~8月3日(日)
・会場:早稲田大学坪内博士記念演劇博物館 3階常設展示室「近代」コーナー
・評者:伊藤 由紀

大正期の一大流行歌「コロッケの唄」の作詞者として知られる益田太郎冠者の生涯と作品を、小さな展示室2つに詰め込んだ企画展。

「コロッケの唄」は、物の本には浅草オペラ『カフェーの夜』(大正6年10月)の挿入歌、と書いてあることが多いのですが、もともとは帝国劇場の女優劇『ドッチャダンネ』(大正6年5月)の挿入歌として作られた楽曲であることを、本展は繰り返し指摘します。

太郎冠者は三井財閥系の実業家で、経営者として参加した帝劇に多数の台本を書いたという経歴の持ち主です。そのため、帝劇開場以前の時期に新派に台本を提供していたのを除けば、以降の作品はすべて帝劇で初演されました。というわけで、太郎冠者の生涯をたどる本展は、必然的に帝劇の女優劇を振り返る試みでもありました。

従来の日本オペラ史研究では、帝劇については歌劇部(大正5年6月の解散時の名称は洋劇部)による翻訳歌劇の上演ばかり注目されてきた感があります。でも洋劇部の解散以降も、帝劇の舞台では、軽音楽を挿入した太郎冠者作品の上演が続いていたわけで、こちらの動きも見落としてはならないと感じました。会場では貴重な音源を多数聞くことができます。

会場の展示も興味深いものでしたが、それ以上に図録がいいんです! 約20ページにおよぶ「益田太郎冠者作品 上演記録・舞台写真集」は、帝劇ほかで上演された太郎冠者作品の基礎データ(初日、場割、併演作品)と、演博所蔵の舞台写真を網羅的に掲載。さらに、喜劇『唖旅行』『第一回 高速度喜劇』の台本の全文と、2つの談話記事を収録しています。太郎冠者作品はほとんど出版されておらず、現在手軽に読めるものではない(※)ので、これはありがたい。ただそれだけに、翻刻の際の入力ミスらしきもの(「と急ぎか見てに向わんとする」p.55とか)が散見されるのは残念です。

※単行本化されたいくつかの作品は、国会図書館デジタルコレクションでインターネット公開されています。「唖旅行」は『新作喜劇集』(明治41年東陽堂)に収録のものがネットで読めますが、これは3幕4場の川上音二郎一座版。今回の図録に収録されているのは4幕5場なので、大正3年の帝劇版と思われます。

今回の図録にはこのほかに、2つの解説(落語作家としての業績を紹介するものと、帝劇での仕事に関するもの)と関連年表、主要参考文献一覧が掲載されています。その一方で出品資料のカラー図版は一部に限られており、展覧会の記録というよりは研究資料としての側面の強い仕上がりです。全72ページ、定価900円(税込)。


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