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[おすすめ]貴婦人と一角獣展

・会期:2013年4月24日(水)~7月15日(月・祝)
・会場:国立新美術館
・評者:吉岡 悠平

中世ヨーロッパ芸術の最高傑作のひとつに数えられる6点組のタピスリー、《貴婦人と一角獣》。フランスのクリュニー美術館に収蔵されているこの連作タピスリーは、メリメ、ジョルジュ・サンド、プルースト、リルケなど多くの作家に激賞され、今では世界的に有名になりました。人々を惹きつけてやまないこのタピスリーは、幻想的な主題、調和のとれた構成、エキゾチックな色彩、精緻な製作技法など、その名声にふさわしい大きな魅力をそなえています。ですが、《貴婦人と一角獣》の最大の魅力は、なんといってもその「謎」にあります。ここでは、その「謎」のいくつかをご紹介させていただきます。

これから先を読む前に、リンク先にあるタピスリーの画像を少しご覧になってください。
http://www.musee-moyenage.fr/ang/pages/page_id18368_u1l2.htm
ご心配なさらずに。展覧会に行く前に見ても、実物に触れたときの感動が薄れることはないでしょう。むしろ、ディスプレイ上のタピスリーと、実際のタピスリーの絢爛豪華さのギャップに驚き、より大きな感動を得られるかと思われます。

さて、「謎」の紹介です。まず、貴婦人について。6点のタピスリーは、どれも似たような構図をとっています。向かって左側に獅子、右側に一角獣、そして中央に貴婦人。しかし、実物をゆっくり見ていくと、貴婦人の表情がひとつひとつ違っていることにしだいに気づきます。毅然とした顔、穏やかな顔、やさしげな顔、楽しそうな顔、少し疲れた顔、そして・・・。さらに、表情だけではなく、ドレス、装飾具なども、それぞれまったく違っていることにも気づくでしょう。それでは、タピスリーに描かれた貴婦人は、同じ人物ではないのでしょうか?獅子や一角獣は同じに見えるのに、貴婦人だけが違うのはなぜでしょう?

次に、貴婦人をとりまく人やものについて。先に述べたとおり、一角獣と獅子はすべてのタピスリーに登場します。貴婦人のとなりに侍女が描かれているものもありますが、2点は描かれていません。また、ほとんどのタピスリーで、貴婦人たちを取り囲むように4本の樹が描かれていますが、うち1点だけは2本しか描かれていません。そして、タピスリー全体にたくさん描かれている動物や花々も、それぞれに注目してみると、描かれたり描かれなかったりしています。ただ、目を凝らしてみると、なぜかウサギだけがどのタピスリーにも登場しているのに気づくでしょう。間違い探しのようですが、これらはたまたまなのでしょうか?それとも、意味があるのでしょうか?

最後に、最大の「謎」とされる「我が唯一の望み」について。1500年ごろに製作されてから長らく解明されていなかった《貴婦人と一角獣》をつらぬくテーマですが、20世紀初頭に「五感」をテーマにしているという説が有力になりました。それぞれのタピスリーは、次のようなテーマをもっています。貴婦人が一角獣に触れる「触覚」、鷹に餌をやる「味覚」、花輪を編む「嗅覚」、オルガンを弾く「聴覚」、一角獣を鏡に映す「視覚」。しかし、6枚目、すなわち貴婦人の後ろに天幕が描かれているタピスリーのテーマだけが明らかになっていません。天幕の上部には、"MON SEUL DESIR" (我が唯一の望み)という銘文が描かれています。五感を超えた「我が唯一の望み」とは何を意味するのでしょうか?このタピスリーに描かれる貴婦人は、何を想い、何を望むのでしょうか?

本展覧会は、《貴婦人と一角獣》の「謎」を、一角獣、動物と植物、五感、服飾、紋章などの観点から解き明かそうとする試みを行っています。これまで述べてきた「謎」についても、別のタピスリー、当時流行した装飾具、寓話の挿絵などを用いて考察を行っております。もちろん、これらの《貴婦人と一角獣》考察のために紹介される展示品も、見ごたえのある芸術作品ばかりです。

冒頭に述べたように、《貴婦人と一角獣》は第一級の芸術的価値をもちます。しかし、これまでフランス国外に出たことは一度しかありません。もしかしたら、今後100年のうちに再び日本に来ることはないかもしれません。今回の「貴婦人と一角獣展」は、フランスの至宝に直に触れることのできる貴重な機会であり、さらにその最大の魅力である「謎」の解明に迫るスリルも味わえるという、とても贅沢な時間が過ごせる展覧会です。この記事をご覧になった皆さまも、ぜひ会場に足を運んでいただき、《貴婦人と一角獣》のもつミステリアスな魅力を体験していただきたいと思います。


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