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[寸評]「具体」--ニッポンの前衛 18年の軌跡

・会期:2012年7月4日―9月10日
・会場:国立新美術館
・評者:松尾 梨沙

 美術史の方々はもう足を運ばれたかも知れませんが、ただいま開催中の話題の展覧会「『具体』--ニッポンの前衛 18年の軌跡」に、私も行って参りました。当日はかなりの猛暑日で、国立新美術館一面のガラスに反射した光には、身を焦がされる思いでしたが(笑)、そんな季節にぴったりの、戦後高度成長期を象徴する関西人アーティストたちの情熱と勢いが、充分に伝わってくるような展示となっています。

 具体美術協会(通称「具体」)は、1954年、戦前から活動していた前衛美術家、吉原治良をリーダーとして、阪神在住の美術家たちで結成されたグループです。吉原の「われわれの精神が自由であるという証を具体的に提示したい」という思いから、各人の感動や歓喜、精神の自由といった抽象的なものを、色彩、かたち、物質によって、直接的かつ具体的に提示することを目指しました。フランス人美術家ミシェル・タピエに見出されたことから、"GUTAI"は日本の前衛美術グループとして海外で有名になったにもかかわらず、東京ではその実態が紹介される機会がこれまで無かったということで、その意味でも本展は貴重な機会のようです。

 私の専門は音楽なのですが、従来の「絵画」という枠組を越えようとしたそのエネルギーは、なるほどよく伝わって来ます。というか、この時代前後の割と長いスパンで、欧米諸国で起こった芸術の様々な考え方やスタイルが、ここでも同じ様なかたちで表出しているという感じでした。

 例えば、線と平面が意識された、吉原治良、金山明、大原紀美子の作品や、平面性と物質性を意識させる嶋本昭三、前川強の作品などを見ていると、20世紀初頭ロシアのファクトゥーラの概念が、やはり彼らの発想の根底にもしっかりあったように感じられますし、またニューヨーク・スクールの画家たちの取り組み方に共通する部分もあったように思います。とくに前川作品は、やはりシュヴィッタースやラウシェンバーグに似ていますし、金山や吉田稔郎の作品はポロックを想起させます。

 平面性と物質性という考え方は、音楽界においても極めて重要で、とくに私が学んでいるポーランドでも、20世紀音楽でそのように「美術的に」捉えることによって、かたちが見えてくる作品もあるため、その意味では私にとって大変刺激的で、学ぶところの多い展示でもありました。

 しかし抽象芸術のこういったスタイルは、日本のGUTAIと欧米とで、どちらが先に発想したんだろう、やはり欧米が先だっただろうか...、あるいはGUTAIと欧米の芸術とで完全に違うところはあったんだろうか...など、思うことも色々あって、その辺りはぜひまた専門の皆さんによく伺いたいものです。

 カタログはA4版ですが若干縦長で、表紙カバーがボール紙仕様、蛍光黄色地と、なかなか面白いデザインです。展覧会は、今年9月10日まで開かれています。


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