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[寸評]東京スカイツリー完成記念特別展「ザ・タワー~都市と塔のものがたり~」

・会期:2012年2月21日(火)~2012年5月6日(日)
・会場:江戸東京博物館
・評者:伊藤 由紀

2月20日に開催された内覧会に行ってきました。1Fホールで行われた開会式は、竹内誠館長の挨拶、主催・後援等の紹介、PRキャラバン隊「えどはくタワーズ」によるパフォーマンス、常設展示室に設置された「太陽の塔 黄金の顔」の紹介、と続きました。「黄金の顔」の3日間の設置作業を、定点カメラの早回し映像で見せていただいたのが面白かったです。

企画展は全5章構成。プロローグ「二つの塔」ではバベルの塔と仏塔を、第1部「都市の塔の誕生前史」では江戸~明治前半期の鳥瞰図と展望施設を、第2部「近代都市の塔と万博」ではエッフェル塔と浅草十二階(凌雲閣)と初代通天閣を、第3部「新しい時代の塔」では東京タワーと現在の通天閣を、エピローグ「塔が生まれるとき」では東京スカイツリーを、それぞれ取り上げています。

私としては浅草十二階を目当てに見に行ったのですが、意外にその前史の部分が面白かったです。アポリネールのカリグラムよりずっと緻密な「300行からなる300メートルのエッフェル塔」(cat. no. 66)が、エッフェル塔完成のその年に早くも書かれて(描かれて?)いるのには驚きました。

その他にも、建設中の定点写真(cat. no. 62)、ペーパークラフト(cat. no. 69)、双六(cat. no. 73)、世界の建造物を一堂に集めた高さ比べの図(cat. no. 49)など、現代でも定番の塔表象のあらかたが、エッフェル塔の時点ですでに登場しています。ただ、日本の双六(cat. no. 46, 119, 142など)が塔の頂点を文字通りの「上がり」とするのに対し、エッフェル塔のそれは頂点で折り返して地上に戻ったところがゴール、というのは面白いですね。家に帰るまでが遠足です。

双六つながりで、これは笑えない......と思いつつも、ちょっと分かる気がしたのが「大正大震災双六」(cat. no. 165)、震災の翌年の発行です。ふり出しのコマの名前は「ゆり出し」で、サイコロの目に従って「上野公園」「被服廠」などの避難場所に行き、「バラック」「仮住居」などを経て「生命 財産 安全」と書かれた上りを目指します。どの避難場所に逃げた後も、サイコロの目によっては「死亡」で終わってしまう可能性があるのが厳しいです。

この出品をはじめ、十二階の震災による炎上(大正12年9月1日)とその後の爆破(同23日)を取り上げた一連の展示は、いま見ると重いものでした。爆破を見ていた人々がつい「万歳」と口にして「どつと笑つた」、というエピソードを伝える川端康成『浅草紅団』の一節がパネルで引用されていましたが、3・11後のあの奇妙な昂奮状態を経験したいま読み返すと、このエピソードも何か妙に腑に落ちます。

ただ、震災の話題がアクチュアルすぎて、建設当初の輝いていた頃の十二階の印象はいまいち薄れてしまったように思います。浅草オペラへの言及が特になかったことも個人的には残念でしたが、順路の後のほうで思いがけず関連資料を見つけました。通天閣のビリケンさん(cat. no. 279)に関する出品の中に、ビリケン到来当時のブームを伝える資料として、東京歌劇座のお伽歌劇《ビリケンとキユーピー》のプログラム(cat. no. 282-283)が含まれていたのです。大正6年11月の日本館での公演は、ビリケン杉寛、キユーピー澤モリノ、主役級らしき少女二人が天野喜久代に河合澄子という豪華キャスト。

会場の展示方法については、また双六の話で恐縮ですが、紙をめくると建物の内部が見える(cat. no. 119)、気球乗りのスペンサーの姿が見える(cat. no. 142)などのギミックが、閉じられた状態のまま展示されていたのは残念でした。せめて開いた状態の参考図版があれば(カタログには掲載)。音声ガイドには、通常のお堅い解説のほかに、別トラックで山田五郎氏のコラムが収録されています。

カタログはA4版208ページ。出品作品の図版のほか、担当学芸員の岩城紀子氏(江戸東京博物館)、船越幹央氏(大阪歴史博物館)の短い論文、細馬宏通氏(『浅草十二階 塔の眺めと〈近代〉のまなざし』)、橋爪紳也氏(『明治の迷宮都市』)など、納得の人選によるエッセイを収録しています。

大阪歴史博物館に巡回(5月23日~7月16日)。


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