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[寸評] 「松岡映丘―日本の雅 やまと絵復興のトップランナー」展

・会期:2011/10/9-11/23
・会場:練馬区立美術館
・評者:佐藤 弥生

 2011年に生誕130周年を迎える日本画家、松岡映丘。その30年ぶりとなる大規模な回顧展が練馬区立美術館で11月23日まで開かれている。兄に民俗学者の柳田國男を持つ映丘は、古典文学に取材したやまと絵を多く描いた。日本史の教科書などで一度は見たことがあるであろう≪右大臣頼朝≫も、彼の筆によるものである。

 筆者が見たなかで、特に印象深かったのは≪道成寺≫(1917年)だ。歌舞伎や浄瑠璃でもおなじみの道成寺から題材をとった六曲一双の屏風絵で、僧安珍(ここでは浄瑠璃版道成寺に基づき桜木親王の姿をとっている)と清姫が満開の桜の下出会う瞬間を描いている。いわば古典といえる主題にもかかわらず、この作品を斬新なものにしているのはその入り組んだ構図だろう。大きく枝をのばす桜の樹、鐘つき堂の柱が人物群の間をぬうように描かれ、また人物像の視線はみな微妙に異なり、ジグザグ状に交差する。見る者の視線も、こうした複雑に錯綜する構図を目で追ううち自然と蛇行してゆくかのようだ。加えて、六曲一双屏風の蛇腹状の構造も相まり、絵の構図はまるで右隻の若く美しい娘の成れの果てを暗示するかのように蛇のようにうねうねとまがりくねる。

 こうした映丘の入念に計算された構図は、1930年代を境に、それ以前の抒情的だがぎっしりと描き込まれたものから、より余白をたっぷりと取る伝統的日本画のそれへと近づいてゆく。後者の結実ともいえるのが、絶筆となった≪矢表≫(1937年)である。やはり六曲一双屏風の形式をとるこの作品はあえて余白を大きく残すことで、主人を守るため自ら飛び出し盾となる武士の一瞬の様子、その張りつめた空気までも感じさせる。


 残り会期期間もわずかだが、秋の深まりを感じられるこの季節、映丘のやまと絵で日本古来の美を味わってみてはいかがだろうか。


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