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[寸評]THE ハプスブルク展

・会期:2009年9月25日〜2009年12月14日
・会場:国立新美術館
・評者:永井 久美子

このところ駅や新聞、テレビ等で広くPRがなされており、ヴィンターハルターによる皇妃エリザベートの肖像や、ベラスケスが描いた王女や王子の肖像などが来日中であることをご存じの方も多いのではないでしょうか。先日その「THE ハプスブルク展」を見に行ってきたのですが、私の専門分野をご存じの方は、平安時代の絵巻物を研究している永井さんがなぜ、と思われるかもしれません。ジョルジョーネにティツィアーノ、デューラーにクラナッハと、もちろん見どころは山ほどあるのですが、専門分野に関連して私が今回足を運ぶきっかけになった作品は、明治2年に天皇からフランツ・ヨーゼフ1世に贈られたという画帖です。

日本の風俗、物語、そして花鳥を描いた画帖は、西洋絵画が並ぶ今回の展示で、やや異彩を放っていました。けれども、両国の友好の証に贈られたとされるこの画帖こそ、日本とオーストリア・ハンガリーの国交140年を記念しての開催となった今回の展示の趣旨を、ある意味もっともよく表した作品といえます。現在、ウィーン美術史美術館の所蔵となっており、日本への里帰りは初めてとなります。2帖全100図に及ぶ画帖の内容をすべて展示することはさすがに難しく、展示部分は限られていましたが、カタログにはカラーで全図が掲載されていたのが大変ありがたかったです。

ガラスケースを覗き込んでいると、きれいな絵ねえ、といった感想が周囲から何度か聞こえてきました。確かに非常に豪華な画帖なのですが、ただ美しいということだけでなく、文化史的にいろいろ考えさせられる作品だと思います。『美術研究』第379号でこの画帖を紹介された塩谷純氏も指摘されていることですが、平安時代の絵巻物のほか、先行する作品の図様が引き写されていること、明治初期に元御用絵師たちがどのような活動をしていたかが窺えること、そして国交に絵画が用いられたことなど、実に興味深い作品です。

今回実物を見て改めて気になったのは、『平家物語』を描いた絵が元御用絵師の住吉広賢によって複数手がけられている点です。『源氏物語』や『伊勢物語』も取り上げられているのですが、一番多かったのが『平家物語』で、その場面の選び方と、明治初期における武士のイメージについて考えさせられました。歴史画におけるイメージの源泉の一つともなった『平家物語』が、明治期にいかに受容されていたのか、考察してみたいと思った次第です。


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