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[寸評]「セバスチャン・サルガド アフリカ」展

・会期:2009年10月24日〜2009年12月13日
・会場:東京都写真美術館
・評者:佐々木 悠介

 昨夜、恵比寿の写真美術館で行われたサルガド展の内覧会に行ってきましたので報告します。今橋先生がご都合でいらっしゃれないのを代わりに行ってきたもので、カタログは後日、美博の資料室に入れておきます。

 今回は2003年に続く写美での展覧会とあって、比較的近作が多く展示されていました。元来、サルガドは所謂「アフリカの苦しみ」を写真として表象しながら、一方で映像の極めて美的な側面を強く感じさせるところがあって、それが写真家として稀有なところでもあると同時に、その両義性あるいは自己矛盾が批判(ないし揶揄)されるところがあったと思います。しかしおそらく90年代の半ばあたりから、有り体に言えば「アフリカの希望」のほうに徐々に題材が推移しており、それによってサルガドが抱えていた自己矛盾がいちおう克服されたかに見える、というのが今回の展覧会を見ての印象です。
 昨夜の内覧会ではサルガド夫妻も出席しての簡単なレセプションもあって、本人もフランス語で挨拶をしましたが(自分の写真に関しては一言も喋らず)、相変わらず大柄でスレンダーな体型を維持していて、今なおアフリカに取材に行き続けているのも成る程と頷かせるものがありました。しかしやはり、年齢を重ねて変化していく肉体的条件の中で写真を撮り続けなければならないというルポルタージュ写真家の宿命も、前述のような題材の変化からは感じました。
 もちろんフォト・ルポルタージュというものは決して「現実をあるがままに写し取ってリポートする」ものでは有り得ず、言ってみれば一人の写真家と対象との個人的な対話の記録に他ならないわけですが、そのことを写真家自身は意識しているであろうけれども、一方でこうした展覧会を主催・協賛する側がどの程度それを認識しているのか、興味深いところではあります。

 ところでサルガドの展覧会というのはいつも大変にプリントの質が高く、今回は表面にパール状の凹凸のある紙を使った大きなプリントで、彼の写真の絵画的な側面が遺憾なく発揮されたものでした。カタログによればすべて「インクジェット」によるものだそうで(前回の2003年の時はすべて銀塩プリント)、これには白黒写真のインクジェット・プリントに関する私自身の認識も変えざるを得ませんでした。
 ただしカタログのほうは、過去の日本でのサルガド展と比べてもフォーマットが小さく、なおかつ1ページに複数の図版を配するレイアウトも見られて、かなり小さな図版が多くなっています。写真展のカタログというものは、それ自体が写真集として貴重な表現媒体なわけですが、サルガドの図版の魅力の大半が失われてしまっていて、残念です。


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