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[寸評]氾濫するイメージ 反芸術以後の印刷メディアと美術 1960's-70's

・会期:2008年11月15日〜2009年1月25日
・会場:うらわ美術館
・評者:佐々木 悠介

 うらわ美術館で開催中の「氾濫するイメージ 反芸術以後の印刷メディアと美術1960's-70's」展を観てきました。
 いろいろ珍しいものを見られる、というのが第一印象です。雑誌の表紙はまだしも、ポスターのようなものは古くなればなるほど、なかなか良い状態で保存されたものを観る機会もないですし、そういう媒体で発表されるアート作品が、その時代の芸術潮流のある側面を確かに現している、という想定(主催者の意図は、つまるところそういうことではないかと思うのですが)はやはり大切なことに思われます。
 カタログは、担当学芸員の森田一さんによる解説的(?)な論文一つと、展示図版、年譜や参考文献からなっており、面白い図版が載っているのでいちおう買ってみました(1800円)が、論文はもの足りなく感じました。このような多様な方向性を持った題材であれば、複数の論文が並べて載せられて、異なった視点からの分析が欲しかったというのが一つと、しかしおそらくこの展覧会の構成では、上述の解説的な一本以外は書きようがなかったであろう、というのが一つです。
 というのは、この展覧会は印刷メディアというものに目を付けていながら、それらの媒体で図版と同じ程度の重要性を持ち、なおかつ図版との間に相互的な記号作用を持っているはずの文字テクストのほうには、実はほとんど注意を払っていないからです。担当学芸員の論文では「イメージに焦点を当て」ることが再三強調されていますが、印刷メディアのアート作品を考察する上で、これはすでに無理のある前提です。また論文中、〈複製芸術〉とか「イメージの大衆化」といった概説のほうにかなりのページ数が割かれ、なぜこの展覧会で8人の作家を選んだのか(約30名の候補の中から絞ったということですが)、ということに関する説明は十分ではない。それはおそらく説明しようがないからでもあります。そのような構成の展覧会で、たとえば外部の研究者の論文は、書きようがないかも知れません。
印刷メディアのアートという重要なものを取りあげ、しかもこれだけの数の(通常では手に入りにくい)作品を集めた展示とカタログは、資料としても貴重であり、それだけでもこの展覧会・カタログの意義は充分にあると思います。しかし同時に、印刷メディアのアートというものを考え、分析する視点はまだまだプリミティヴなものかもしれません。会期は1月25日までです。


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