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[寸評]未来への贈りもの ―中国泰山石経と浄土教美術

・会期:2007年4月10日~6月10日
・会場:九州国立博物館
・評者:手島 崇裕

大型連休の前半戦、九州国立博物館で開催中の特別展「未来への贈り物」を見に行きました。

中国泰山等の岩壁に刻まれた「摩崖石経」の巨大拓本(もちろん原寸大)が同展の目玉のひとつなのですが、3階の特別展示室の外から1階エントランスに向かっても吊り下げられており、会場に入る前、エスカレーターに乗っている時からそのスケールに圧倒されてしまいました。会場内は4章構成ですが、その第1章「中国摩崖石経の世界」で展示されたものも含め、見る価値ありだと思います。

第2章「末法の到来と浄土経」第3章「法華経信仰と装飾経の美」は、「浄土教美術」(浄土信仰の美術)という、よくある展示テーマとなるわけですが、良い意味で予想を裏切られ、非常に面白かったです。北部九州からの出品物や、同地と直接/間接に関係する中国・朝鮮半島からの伝来文物が展示全体のなかに効果的に織り交ぜられており、それらの対外文化交流における価値が顕現化するとともに、定番の出展物ともうまく響きあっているように感じました。この展覧会においても、同館の東アジア(海の向こう)への視界は良好なのだな、と思いました。

第4章「九州の経塚遺宝」に私はもっとも興味を持ちました。同博物館のある太宰府地域をはじめ、北部九州が経塚文化の一大拠点であることはよく知られています。同地域経塚出土の経筒などは、東京や各地の博物館でも目にすることはできますが、今回のように出土地の間近で、しかも一貫したテーマのもと展示されたことの意義は大きいのではないでしょうか。泰山等中国の石経拓本――経塚遺品と直接的影響関係にあるわけではないのですが――にまず触れ、ついで異文化交流の歴史の中に浄土信仰の展開を見たうえで、九州出土の経筒や瓦経、銅板経などを目の当たりにすると、つい様々な想像をかきたてられてしまいます。中国や朝鮮半島など海外のいくつかの地、そして日本の京都周辺といった各仏教文化発信源からの情報が交じり合う場として当地があります。かつてこの地にかかわった様々な(内外の)人々の信仰心の表れがこれらの「遺宝」なのだと思うと、ついつい見入ってしまいました。

カタログは、スタンダードな作りであるのに加え、例えば図版19『玉葉』という貴族日記(写本)の重要部分について図版下に活字の起こしが加えられるなどの配慮が各所にあり、好感が持てるものです。ですが、同じく図版について、各出品物の制作年代と制作地が写真(図版)と同頁に記されず(現所蔵者(と出土地)のみ記されるオーソドクスな作り)、それらを含めた作品データを知るには後ろの作品解説へとページをめくる必要があることに多少の不便さを感じました――同展の場合、宋や高麗で制作された展示品がいくらか存在し、何度も前後を往復してそれらを確認する必要に迫られるからです。ともあれ、これからじっくり読み進めたいと思っています。

なお、同博物館は4階の文化交流展示室(いわゆる常設展示室)も「海の道、アジアの路」というテーマのもと、充実した展示が行われていると思います。今回の特別展と同時に見学するといっそう楽しめるのでは、と感じました。福岡―九州にお出かけの際は、太宰府まで少し足をのばしてみてはいかがでしょうか。


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